好きになった相手と両思いになった途端その相手が消えてしまうというストーリーの基本ラインは恋愛における何かのメタファーかと思ったが、終盤そこにしっかりとした理屈付けがあって納得できた。
見上愛さんが演じるりのが恋愛に於いて自分が多少なりとも傷ついた時、相手が消えたと記憶を置き換えて人生をやり過ごしてきたこと。その時々の相手を自分の過去の記憶と結びつけて常に人生最良の理想相手としての甲野じゅんに置き換え、めげることなく彼を追い求める恋に生きるりのの姿には元気を貰える。
とは言え、恐らくりのの過去記憶の中の甲野じゅん本人であろうと思われる大学で出会った彼が脳の障害でその日1日の記憶しかない設定は、りのの恋愛記憶改変に対するカウンターとして存在しているのは理解できるが、毎日「好きです」と告白し続けるりのの頑張りはあまりに昭和的で男側に都合良すぎるキャラ設定だなと。
りのを理解し常に見守る立ち位置の田中の存在も、作品的には最後まで昇華されずに終わってしまうのもモヤモヤ感が残る。
ただ見上愛さんという女優の魅力を前面に描き出すことには確実に成功していて、作品全体の印象も結局はそこに集約されて心地良さを覚えるので、鑑賞後感は全然悪くないという不思議が映画マジックというものなのかな。
【追記】
原作見たら、これ甲野じゅんと長谷部りののキャラが真逆の展開なのね(笑)