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戦雲 いくさふむのyadokariのレビュー・感想・評価

戦雲 いくさふむ(2024年製作の映画)
3.8
三上智恵監督のドキュメンタリー。『標的の村』から沖縄の基地問題にスポット当ててこれまでかなりハードなドキュメンタリーを撮り続けているのだが、もうライフワークと言ってもいいかもしれない彼女の映画スタイルになっている。

何よりも『標的の村』で沖縄本島が分断される様子を撮り続け、沖縄の基地問題も一枚岩ではないのというのを知らしめた。それでも双方の側から揺れる沖縄を見せている。

今回は沖縄本島だけではなく沖縄列島が台湾有事の防衛線として、米軍の不沈空母的役割を島が持ち、それに自衛隊が協力(米軍の軍備の肩代わり)としてのミサイル防衛であり、それは島の住民を守るためではなく、一つの島の軍隊で攻撃しては後ろの島へ逃げるという作戦なのだ。それは最初の島民を守るための軍備増強というのではなく、有事としての戦略としての軍備配備なので、相手となる中国も警戒しないわけではないので軍備競争となっている面があるのだ。そして中国側には北朝鮮がいるので、いくらでも口実を作って軍備を増強させていくのである。

その中で北朝鮮のミサイルが飛んでくるからと地下シェルターに避難訓練とか実際にやっているのだった。普通に考えればそんなミサイルばかり増やしても島は守れるかというとすでにそのための(島民を守るための)ミサイルではないという事実が明らかにされる。

そのなかで自民党は基地を作ることで沖縄経済が潤うとか甘い言葉を囁いているのだ。実際に自衛隊や米軍施設で働いているものもいて、それが沖縄の対立となって、例えば父と息子では意見が違ったり、若者は働き場所が必要だったり、あるいは島での反対運動の住民が非難を浴びたりする沖縄だけではなく、近隣諸島でも基地の軍備化がどんどん進んでいるのだった。辺野古だけニュースになって流れるが、そうした島での軍備化はニュースにならずに、住民の中にもあきらめムードが漂っているという。

ただそれでも反対運動をする人は、そうした情況を考えて最期まで反対意見をしていこうという決意(たぶん死ぬまで)なのだろうと思う。三上監督も同じ気持ちなのだろう。それは沖縄本島で米軍に土地を奪われ島に流れ着いて、開拓して土地を豊かにしてきたという歴史があるのだ(棄民の歴史だ)。また日本に復帰する前は台湾への輸出(魚介類)も出来て、島民は潤っていたという。

そんな中でカジキマグロ漁をする漁師の爺さんを映したり(ここは「老人と海」のようだった)、沖縄に古くから伝わる行事、エイサーやハーリー(カヌー競争)も映し出す記録映画にもなっている。
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