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オーメン:ザ・ファーストの針のレビュー・感想・評価

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
4.1
往年の大ヒットホラーの数十年越しのリメイクという、この手の映画の中では出色の出来! との感想を聞いて観てきました。結果、確かにそうなのかもと自分も思うぐらいよかったです。

主人公はシスターになるためにアメリカからローマの修道院にやってきたマーガレット。彼女はいつも孤立して過ごしているカルリータという少女と心を通わせますが、やがて教会のおどろおどろしい側面に飲み込まれていく……。

ちなみに自分は『オーメン』は初代のみ視聴、『2』以降は未見です。さらに言えば初代も、正直安っぽさは否めない、いろんな死に方展覧会みたいな映画だなーという印象で、ダミアンが可愛かったこと以外はほとんど覚えておりません……✝️
しかしその点この映画は、『オーメン』の前日譚という形を借りて実質全然別のタイプの恐怖を描いた作品だったので、そこが自分には良かったです。

個人的にこの映画は、①映像の強度とそこから醸成される厚み、②テーマの強烈さ、の二点に収斂されるかなー。
①ローマの街も出てくるけど舞台の大部分は修道院内に限定されていて、そこを映し出す光と影の具合がすごくいい。黄色い壁に黄昏どきみたいな光線が差してたり、蝋燭の光の中にズーン……と夜の闇が浮かび上がってきたりする、この感触にはけっこうグッと来ました。作品全体を支配するやや迷信めいた論理とも相まって、1970年の設定なのにまるで中世とか前近代の物語みたいな雰囲気が醸し出されてると思う。ここが一番いいとこかなー。
②のテーマについてはコメントのほうに書きますが、おそらく初代の『オーメン』とは違う角度から別種の恐怖を扱っていて、こちらもけっこう強度があって自分は好き。こういうお話をどうにもならない惨劇=ホラーとして描いてるのを見るとちょっと嬉しくなってしまう。

……という感じで上の①②が自分の主な感想なんだけど、逆に言うとそこが好みの分かれ目でもあるかと思います。舞台設定が古風な宗教施設なのもあって、初代『オーメン』みたいに現代生活が怪異に侵犯される=モダン・ホラーというよりはかなりゴシック調の宗教ホラー感が強い。加えてテーマの違いから、元の作品とはトーンがかなり異なってるので、求めてたのと違うと感じる方もあるいは居るかもなーと。

終わってみるとけっこうシンプルな話ではあって、『オーメン』との接続はまぁこんな感じかーとか、気になる部分もなくはない。でも元の作品に寄りかかり過ぎず、ちゃんと別の映画として頑張ってるのが好ましかったなー、自分は。

あとモザイクのシーンは自分もわりと気になりました。見えないことが問題というより、モザイクで隠されることでそのシーンのトーン自体がやや違ったものになってる気がするのがちょっと……。

終盤の感想とかはコメントで。



(以下余談。観たい人はもうあらかた観たってことだろうけど、観客が自分ひとりでまた貸し切り状態でした。自分はホラーが苦手なので、いつも座席の肘掛けを握りしめて必死にジャンプスケアを警戒しながら観るのですが〔情けない〕、今回は周りの目を気にすることなく思う存分座席にしがみつくことができました! もっともこれは、そんなにビックリビックリで見せてく映画ではなかったですけど)
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