シシオリシンシ

宇宙戦艦ヤマト 劇場版 4Kリマスター (1977年初公開版)のシシオリシンシのレビュー・感想・評価

4.0
SFアニメの古典的金字塔たるヤマトであるが、平成初期生まれの私にとってのヤマトは小学生のころCS放送されていた無印TV版を飛び飛びで見ていた記憶やバラエティの懐かしアニメ名場面で見た程度で、物語のイロハが分かるようになってから見たのが今回が初なので、実質初見での感想となる。

「アニメは子供向けにとどまらない」という価値観をパブリックに知らしめ、日本のTVアニメのグレードを次のステージに引き上げたアニメ史において無視できない絶大な影響力を持った作品。知識としてそういう評価なのは聞き及んでいたが、実際に劇場版として無印ヤマトを見てみてその意味が実態を持って伝わってきた。

実際に存在した軍艦を宇宙戦艦にして異星人の艦隊と戦わせるという荒唐無稽なアイデアを当時としては画期的なリアリティを持ってその作劇上の嘘を唯一無二の魅力として昇華したのは素晴らしい美点。

敗者の復活と人間讃歌が作品の端々から高らかに唱われ、第二次大戦のバックボーンを持つ日本人だからこそ通ずるロマンが、時を経てなお当時からのファンをつかんで離さない要因となっているのだろう。

私が一番心つかまれたのは、ガミラス本星でのデスラーとの決戦後の古代の悲痛な慟哭。
敵の策によっておびき出されたとはいえ、結果的にガミラスに住まう無辜の民を犠牲にしたヤマト。その事実に気付いた古代は、戦争とは善と悪とで成り立つものでなくどこまでも相対的なものであることと自覚し、失われたガミラスの民を思い涙を流す。
戦争というものの本質と善悪二元論の否定を明確に打ち出したこのシーンは後の多くのアニメ作品でさまざまに発展を遂げていくのだが、それらの原点の一つこそヤマトのこのシーンなのかもしれないとそう思えた。

最新の4K技術により高精細でエッジの際立った作画に舌を巻き、本来持つ画の力を存分に伝わるように現代に甦った今回のヤマト劇場版。ヤマトの実質的な初観賞が本作で本当に良かったと思える巡り合わせだった。
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