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Cerdita(原題)のdm10foreverのレビュー・感想・評価

Cerdita(原題)(2018年製作の映画)
3.7
【ザワザワ・・・】

先日劇場公開された「Piggy」の元ネタとなっている短編作品。
とはいっても、パイロット版のような位置づけではなく、スペインのアカデミー賞ともいわれる「ゴヤ賞」「フォルケ賞」など90以上の賞を受賞していることからもわかるように、キチンと作られた短編作品。

(あらすじ)
いじめられっ子の太った主人公サラが、散々自分をいじめた張本人の女の子が誘拐犯に連れ去られそうになっている現場に偶然遭遇してしまうが、彼女は咄嗟に見捨ててしまう・・・。
陰惨なイジメと血生臭さ漂う誘拐、照り付ける太陽に赤く焼けたサラの肌と、その内面に顔を覗かせる残酷な一面・・・

たった14分の作品ながら最後まで緊張感が途切れないまま、あっという間のエンディング。
なるほど、この短尺の中に閉じ込めるにはなかなかのエネルギーを持った作品だった。
これは評価されるだけのポテンシャルはあるかもな・・・と納得。

冒頭から主人公サラ(ラウラ・ガラン)のド迫力BODYに目が釘付けになってしまって、ついつい「キャラ映画」のような雰囲気も感じてしまうんだけど、それこそ開始1~2分で映し出されるサラの表情や人目を避けるような動きだけで、彼女が普段どのような環境で、そしてどのような心理状況で生きているのかがちゃんと伝わってくる。

ビキニを着て泳ぎたいけど、やっぱり人目が気になるのか誰も泳がないような濁ったプールでこっそり泳ごうとするサラ。
でもそこには既に先客がいた。
Tシャツを着たまま水中に潜っていた謎の男。
しかし、その男は誘拐殺人犯であった・・・。

何故この男は目撃者であるサラの口封じを考えなかったのか。
サラはどうして独りでこの男を追跡したのか。
そしてサラはその追跡の果てに「ある事件」を目撃してしまった瞬間に何を考えたのか・・・

心に傷を負った分だけ、人は「痛みがわかる」ようになるのかもしれない。
そして人は「優しさ」の意味を知り、優しさの意味を知った人間は「強さ」を知る。
でも、優しい人間だからといって、必ずしも強くあるわけでもないのだろう。
強さとは「向かい合う脅威に立ち向かう力」「恐怖に打ち勝つ力」そして「己に負けない力」。

サラは究極の場面で「ある選択」をする。
それは恐怖に負けたからだったのだろうか?
それとも自分自身の中にいる「もう一人の自分」が彼女に囁いたのだろうか・・・。

この辺についてはセリフでの説明などをせず、ただサラの表情や動きだけで、彼女の中に瞬間的に訪れる葛藤や刹那的なジャッジの意図など色々なものが汲み取れる。

長編版は劇場公開時にことごとくタイミングが合わなくてスクリーンでは観れていないので、詳細については何とも言えないところではあるんですが、恐らく長編版(劇場公開版)となった時点で、サラやいじめっ子、誘拐殺人犯たちの背景なども掘り下げられていくんだろうな・・・っていう感じもしてます。

ただ、どうなんだろ。
僕はどこかこの短編が粗削りながらも「エンディングのない完成品」にも感じてしまったので、あまり深掘りしてはっきりと輪郭線を際立たせてしまうと、途端に魅力が半減してしまうんじゃないかな・・・って気もしてます。
まだ観てないからわからんけどね。

むしろ、あまり説明は入れずに、サラ(ラウラ・ガラン)のビジュアルだけではなく、彼女自身の内面がどうやって変化していくのかを一緒に感じながら観ていく方が楽しめそうな気はしますね。

短いけどテーマははっきりしているので見やすかったです。
ただ、難点は日本語字幕がないってことかな・・・。
一応英語字幕で凌いだけど、結構弾幕並みに早いので追いつけないこともしばしば・・・。

観たのは昨年の11月なんだけど、そこから何度も運営にお願いしてやっとタイトルが登録されました。
中々登録されなかったので、てっきり「OUT」な作品なのかと思ってました・・・(笑)
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