花火

津島 ー福島は語る・第二章ーの花火のネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

昇りかけの朝日と平原を捉えたロングショット、山々や道などの実景が数秒程度のカットで小気味よく重ねられていく。きれいな景色だ、しかし人の気配が全く感じられない。やがて木に花の咲いていた頃から吹雪くほどの雪まで、人間が全く現れずに一年の時間が流れており、ここでタイトルが映し出される。以降、トーキングヘッズ形式で国と東電に訴訟を起こした津島に住んでいた人々の証言が記録されていく。その語りがかつての暮らしという時間の堆積を感じさせるほか、しばしば差している外光が角度を変えて画面の色味や人物の顔にかかる光/影も変わるため、インタビューの時間の流れをもそこはかとなく伝えている、上手い(特に義父が苦労して建てたという今は誰も住めない家の玄関先でインタビューに応える女性の映像が圧巻)。一方で、第四章の伝統文化について語る人が、語る→感情がこみ上げて言葉に詰まり涙をこぼす→再び話し始める「受け継いで歴史の一部になったと思えた行事ができないのが悔しい」と語るのを1カットで撮りきったのは凄い成果だと思う。
第七章を除き、インタビューにおいてより直接的に原発事故および国や東電の対応を批判する言葉は意外にも少ない。それ以上に、故郷を離れなければならなかった苦悩や悔しさを共有することで観客をその地平に立たせる。
注文があるとすれば、女性が出てくるのが「共同体」「家族喪失」「子どもの傷」という章立てのパートで、(時代背景的に現地にあったであろう)性による役割分担的な背景を無批判に受け取っているのではという感じがしたのは書いておきたい。あと大人に比べて、子供に対しての訊ね方は繊細さに欠いた気もする。
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