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虎を仕留めるためにのどど丼のレビュー・感想・評価

虎を仕留めるために(2022年製作の映画)
4.4
本日授賞式、第96回アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞ノミネート作品。インドのある村で集団性暴力を受けた13歳の娘を守るため、裁判に挑む父親とその支援団体に密着したNetflixドキュメンタリー映画。近作「ウーマン・トーキング」「燃えあがる女性記者たち」にも連なるテーマで、是非多くの人に観て欲しい作品だ。

今日本でも大きな問題になっている性暴力だが、発展途上国のインドでは総被害のうち90%以上が無視されているという衝撃具合。本作はカースト制度のような悪しき伝統により村社会が国家と分断されたインドで、男尊女卑を前提に黙殺して被害者が加害者との結婚を強いられる……という信じ難い状況が映し出される。

とにかく村社会、ひいては国家システムの機能不全に終始苛立ちが止まらず、何度も目を背けたくなった。コミュニティ内にほとんど味方がいない中でも、声を上げる決断をした本作の父娘は本当に凄い。こうした国家の惨状と同等の被害を受けた人へのエンパワメント、そして性暴力の防止を訴える上で、この作品には大きな意義を感じる。オスカーを機に本作がどんどん広がって欲しいな。

それにしても、加害者の顔にモザイク処理が施されていたのは何とも皮肉だ。年齢ゆえか控訴中ゆえかは分からないが、被害者一家が全員顔出しで命懸けで闘っている中でのこれ、今の日本でも似た様な事例が多いけど、どうにかならないのか、、でも冤罪だった場合を考えると、、、逡巡。
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