このレビューはネタバレを含みます
よしあきの人生の登場人物、それぞれが色々なことを抱えている。
登場人物Aは妊娠しても喜べなかった。どんな子になるかわからない不安、育てる不安、仕事を休むことへの不安。でも今はこの子が愛おしい。
登場人物Bは子どもを産むことができない。職場で産休に入る同僚がいれば独り身の自分への皺寄せがくる。でも自分は仕事ができるからこなせてしまう。
登場人物Cは母子家庭で育ち、母には自分の性のことをカミングアウトできずにいた。ある日交通事故で突然母を亡くし1人なる。お母さんの味噌汁もう飲めないんだな。
それぞれが自分の抱えている想いを打ち明け、それを他の3人が受け止めたり、言葉をかけたりする。
こんな場面で、もしかしたら“相手との関係性や今置かれてる状況であったりを思いやって、演じている”人もいるかもしれない。
でもこれがハルモニア、調和。なのかな。
様々な人たちが共に生きる空間。
「なんでも言い合えるのが友達とは思わないけど、ごめんねとありがとうは言えた方がいいよね」
この台詞がとても好きだった。
“千葉さんが紡いだ言葉”だなぁと。
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自分の人生の登場人物は少ない方が良い。
よしあきがそう思う理由が、「めんどくさいから」ではなく「手の届く周りの人を幸せにしたいから」に変わっていた。
「でも、あなたも誰かの登場人物ですよ」
自分の人生の主役は自分だとしたら、周りの誰かの人生の登場人物としての自分もいる。
色んな人がいるけど、誰かが自分の幸せを願ってくれていたり、理解しようとしてくれているはず。
この世界はいくつものハルモニア、調和で成り立っているんだなぁと感じた。
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音楽が心地よくて、エンドロールのセンスがすごく好き。ちなみに前作『あんた』のエンドロールもセンスの塊すぎて忘れられない。
ちょっと沖田監督の映画みたいなあたたかさを感じる映画だった。
(オンライン試写会にて)