うめまつ

季節のはざまで デジタルリマスター版のうめまつのレビュー・感想・評価

3.8
廃墟フェチおいでませ映画かと思いきや、そこまで朽ちてなくて寝泊まりできそうなくらいには綺麗なのでちょっと物足りない。エレベーターが動いてる時点で廃墟と名乗るには100年早いぞ。(別に誰も名乗ってはいない) 幸福な子供自体の記憶が詰まったクラシカルなホテル。そんな舞台設定だけでうっとりするし、実際とろんと微睡みながら見たのもあり、上質な夢の中に彷徨い込んだような心地だった。

ホテルを天国に見立てて、お客さんが天使みたいな真っ白な服着てるシーンがドリーミングで可愛い。女優サラと彼女専属の給仕だったお爺さんとのエピソードも好き。シーズンごとにやってくるバンドが歌うシーンも良かった。その歌手の女性に主人公の子(ピーターパンみたいに愛らしい)が「貴方も子供だったことがあるの?」って聞くシーンで、子供の頃大人は最初から「大人」という生き物だと思ってたなぁとしみじみした。催眠術でお客が服をどんどん脱いじゃうシーンも異様でおかしかったし、そんな思い出と夢と御伽話が混ざり合ったような質感のままラストの部屋に辿り着く。そこはまるで絵本の最後のページのように静かで美しい場所だった。

ミッキーマウスの漫画/屋根裏部屋の宝箱/季節ごとに入れ替わる部屋/お婆さんのお話/鍵穴から覗く大人の世界/奇術師が見せるサハラ砂漠/貝殻と海の見える部屋
うめまつ

うめまつ