この世に未練を残す、死んだ者たちがゆるく集う場所での出来事を丁寧に静かに描いたファンタジックな作品。直近では「最後まで行く」等ハードな作風で認識していた藤井監督が、これほど人の心にただただ寄り添う作品を撮るだなんてと驚くほど、ひたすらにやさしいお話でした。夜に点るランタンの明かりのような、やわらかな温かみが手のひらに残るかのような。
演技巧者が集っているから、一人一人のエピソードがみんな胸に迫り、ぼろぼろと何度も泣いてしまいました。生きる人々への、「その先」へ歩むべき死者たちの想いと決別は、彼らへの未来への祈りでもある。私たちは、ここにいない人たちに静かに背中を押されて、ようやっと、この不条理な世の中を歩めているのかもしれない。
破壊をもたらした海が、それなのにとても美しく荘厳に何度も映されていたのが印象的でした。他にも、夜のパレードの場面の明かりの美しさ、死者たちの遊園地めいた集落、そしてラストの映画館の風景と、映像の美しさが素敵でした。
だから映画館でこそ観たい作品だとも思ったのですが、家で観れたからこそこれだけ臆面なく泣けたとも言えるので、ネトフリ配信はとてもありがたい。それはそれとして、やはり、映画館でもかかってほしいです。
