法月

バクシャク -犯罪の告発-の法月のレビュー・感想・評価

3.7
覚悟して観たのだが、直接的な表現はあまりなく、胸糞な思いまでにはならなかった。目をそむけたくなるような場面までは描かれない。
ただ、登場人物たちの証言から、想像するだにおぞましい女子児童性的虐待事件が浮かび上がってくる作品。

「人のためには悲しめませんか? ご自分を人間だと思いますか? 無感情に弱者を喰らう捕食者ですか?」
主人公の記者兼キャスターの女性の最後の言葉が胸に刺さる。
被害者は街で拾われた孤児の少女たち。
どんな目に遭わされようと涙を流す肉親もいない、闇から闇に葬られようと、必死に探そうとする者もいない。
悪辣な捕食者は、だからそんな孤児の少女たちを貪りつくす。

惨い話だ、だが、所詮他人事だ。
自身の幸福を、愛する家族の安全を脅かされることを承知でその悪行を糾弾しようとする者は稀だ...それが現実。
が、主人公の女性記者は、夫に義姉に義兄にやめろとプレッシャーをかけられてもやめない、突き進む。
多分、現代日本よりも数倍男性優位社会であろうインドでだ。
そこが胸を打つ。

人として正しく生きよう、
そんな思いを突きつけられる映画。
面白い面白くないではない、楽しい楽しくないではない、
こういう映画も必要。
こういう映画も観なきゃダメ(たまには)、てことね。

タレコミ屋のオッサンと、カメラマン兼ディレクター?の爺さんがいい味出してた。
原チャリで二ケツで移動する女性キャスターとカメラマンの爺さん。
「こんなチャンネル、誰が観るんだ(笑)?」
弱小泡沫TV局のド根性模様、そこもよかった。
ちっぽけな告発者が国を動かす可能性、世界を良い方に変えられる可能性、今のSNS社会なら有り得るんだよ。
日本でもね。

毎日一レビューチャレンジ 048
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