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緑の香水のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

緑の香水(2022年製作の映画)
3.0
【ニコラ・パリゼのヒッチコック的アプローチ】
マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルに『アリスと市長』のニコラ・パリゼ監督新作『緑の香水』が来ていた。『アリスと市長』においてオペラ座でのサスペンス描写に力が入っていた。今回はそれを拡張したような作品に仕上がっていた。

オペラ座で役者が「緑の香水」とダイイングメッセージを残した状態で殺される。劇団員のマルタンはヒョこんなことから、謎の組織「緑の香水」と警察に追われることになる。自分の無実を証明するため、また「緑の香水」の計画を阻止するため、彼は走り続ける。ヒッチコック『三十九夜』的、追う/追われるの関係を軽妙に描いてみせた作品。『アリスと市長』で複雑な人間関係をオペラ座の空間で表現していたが、本作でも健在である。注目すべきは、「緑の組織」を追って建物に侵入する場面。非常に入り組んだ空間の中で追跡劇が繰り広げられ、その末に逃してしまうのである。また本作は明らかにヒッチコックを意識しており、舞台で始まり舞台裏で終わるアプローチは『三十九夜』を参考にしているといえる。個人的には思った以上にハマらなかったが、テクニック面で参考になる部分が多い作品であった。
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