ろく

秘密のろくのレビュー・感想・評価

秘密(1999年製作の映画)
4.2
滝田と城定の親和性の問題。

滝田というと「おくりびと」なんかでヒューマン的な作品を描く監督だと思われているがそもそも、出自はロマンポルノ。しかも「痴漢電車」シリーズなんかでエロコメの騎手だった。でも映画を作るのが上手いので(そつがないともいう)、通常の映画監督として一角を担うようになった。

うん。だれかと似ているよね。最近の城定がそうじゃないか。出自はポルノだけどあまりに映画を撮るのが上手なんで最近はすっかりポルノでなくなってきた城定。でも根底はエロなんだよ。そこを忘れてはいけない。

というわけでこの作品。え、感動ものじゃないかって。違いますよ。これは感動もののフリをした立派な「エロ」なんです。

当時人気絶頂の広末にここまでさせるという流石滝田のエロっぷり。ああ、そんなとこしか観てないのね、と言われたら「ええそうですよ」と答えるしかないじゃないか。物語は娘の身体に精神がうつってしまうという東野がいかにも書きそうなぬるいSF(褒めてます)。「転校生」や「パパが私で私がパパで」なんかと同型。でも若い身体に40代の主婦が入るという滝田得意の展開。感動を散りばめながらも「ここでこんなセリフ言わせればエロくねえ?」という滝田の気持ち悪さがビンビンと伝わってきますぜ。

白眉は「口でしてあげよっか」と言わせたり、我慢できずに広末としようとしてパンツ(当然白だ!)まで脱がす小林薫の爆発シーン。夕刊ゲンダイ的には「おやびーん」って感じですよ。全くもう。もうここで身を乗り出してみるおっさんたちですよ。それでいながら最後はしっかりとまとめあげる。これぞウェルメイド滝田の本領なんです。

当然、自分はこんな作品が大好き(すいません)。まあ最後の感動シーンにもベタに涙したし、秘密の意味も(原作読んで知っていたけど)好きだ。そして絶妙なる滝田のエロテイスト。これで嫌いにならないわけがないじゃない。

この手の絶妙にエロと面白さを融合させる監督というと真っ先に思いつくのが大林宣彦。そして伊丹十三。そして本作の滝田洋二郎。僕はこの三人を「商業映画のエロ三人衆」と勝手に呼んでいる。そしてその衣鉢を受け継ぐのは城定なんじゃないかしらん。そっか、自分は城定が好きなわけだわ。
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