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フェアプレーのdm10foreverのレビュー・感想・評価

フェアプレー(2022年製作の映画)
3.7
【勝負に勝って試合に負ける】

これは、試合やゲームの「勝敗」という点では負けたものの、お互いの心理的な面や体裁、争いが収まった後の状態まで含んだ大局的な視点から見れば勝利したとも言えるという意味の言い回しです。
勝負事である以上、どうしても勝ち負けという「結論」は必須ですが、それはあくまでも結果であって、そこに至る過程(試合内容や試合に挑む姿勢など)は十分勝っていたっていうことも往々にしてあるんですよね。
逆にどんなに正々堂々と戦っていても、相手が放った「エグい(卑怯な)一撃」に負けてしまう事だってあるかもしれない。
「勝てば官軍」っていう言葉があるけど、それって「強いものが勝つんじゃない、勝ったものが強いんだ」っていう理屈にも通ずるような、少なからずダーティな意味合いも含まれるような気もするんですよね。。

『だから別に負けてもいい』ということではありません。

競技をやっている以上、誰だって「勝つ」という目標ために日々努力をしているんですから。
でも「相手と競い合って勝つ」のと「相手を蹴落として勝つ」のでは全く意味が違います。

フェアプレー精神なんてよく言いますけど、それって試合中の態度や所作なんかも勿論ですが、日頃からその精神を持ち合わせていない人は、試合になってから急に「フェアプレー精神」を発揮することなんてでないんですよね。

サッカーW杯のサポーターが試合後のスタジアムで自発的にゴミ拾いをしていたなんて報道が世界中から賞賛を浴びましたが、きっとあれってどなたかが日頃から何気なくやっていたことが他のサポにも広がって、やがて「日本チームのサポーターたち」っていう括りにまでなっていったんだと思いますが、きっとフェアプレー精神ってそういうところに宿るんだと思います。

また、フェアプレーとは「ルールに則ること」と誤解されがちですが、全く違います。
ルールを守るのは競技者であれば別に賞賛されるようなことではなく、ごくごく「当たり間」のことなんですよね。
日本人が日本国憲法を守ってたとして「君はフェアだな」なんて言われようもんなら、逆にそう言ってきた人は犯罪でも犯す気なんか?ってゾワゾワしてきちゃいます・・・。

フェアプレーとは、あくまでも「精神」です。

どんな競技であったとしても、フェアな気持ちで試合に臨まないという事は、相手だけではなく競技そのものに対する侮辱でもありますし、ひいては自分自身を貶める行為でもあります。

勝つためには・・・
あいつより目立つためには・・・
何がなんでも俺が手に入れるんだ・・・

自分の目的さえ達成できればそれでいい。
そんな人が「ルール」という共通認識を用いた競技に参加したところで、試合が成立するわけがありませんよね。

僕は「BAD WINNER(悪い勝者)」になるくらいなら、自分自身に恥じないように正々堂々と戦って「GOOD LOSER(正しい敗者)」でありたいと思う。

負けることは悔しいけどね。
そりゃ勿論当たり前。

でも「勝者がいるから敗者がいる」という事実の裏側には「敗者がいるからこそ勝者がいる」という事実も存在している。

自分が勝てば相手が負ける。
相手が勝てば自分が負ける。
ただ、それだけの事。

絶対に負けたくないからこそ、正々堂々と戦って勝ちたい。

これってキレイごとなのかな・・・・。
でも、だとしたら、それを「キレイごと」って吐き捨ててしまう状況の方が寧ろ問題のような気もするんだけどな・・・。
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