船長として世界の海を航海する姉とその妹のドキュメンタリー。グリーンランドの映像が美し過ぎてこの世とは思えない。世界の涯にいるかのよう。複雑で苦難の背景が二人の日常会話からうかがえる。
氷河からの流氷がいくつも漂う中を大型ヨットでクルージングするシーンに、一介のヨット乗りでしかない私は、息を飲んだ。流氷によって変則している潮の流れ、風向きを絶えず読みながらの舵さばき、瞬間の判断、緊張が走る。マストトップからの撮影、流氷は海面下に広がっている。
個人的にすごく刺さることが多かった。というかタイミングがよすぎた。
呪いを解くといい、姉は安定した生活に憧れはするが、家族の愛を知らないから、リスクを取りに極寒の海へ戻ってしまう。唯一、大切なのは妹とその娘。
ドラマ以上にドラマチックな人生を送ってきた二人。けらけらと明るく、年の離れた姉に甘える妹。姉は女に生まれたことを後悔しているかの口ぶりだ。父親が誰かわからない子供を捨てたジャンキーな母に呆れ、その母親を育てた祖母のようにはなりたくないという。
化粧けはないが華やかな美しさのある姉は船長の仕事で男性に言い寄られ、なめられることがあり、男性をも嫌悪している。仕事以外で人との信頼関係を築くことに不安があるようにみえる。
なぜこの姉妹(姉が中心)を撮ろうとしたのか、そのきっかけが気になった。この続きを観ないことには、と思う終わり方だった。長期にわたって追っていくのだろうか。
カメラに意識がいかない自然な姿だったが、第三者のカメラが入ることで変わる人生もあるんじゃないかと思った。誰かに見てもらっている安心感が、セラピー的に。
