ろく

NEKO THE MOVIEのろくのレビュー・感想・評価

NEKO THE MOVIE(2017年製作の映画)
3.0
「純粋な真っ直ぐ」は本当に正しいのかしらん。

どうもこの映画とは全く逆なことを思ってしまった。この映画ではオリンピックに挑戦する猫ひろしを「尊い」ものとして描かれている。そして猫の人柄と相まって僕らは彼を「応援したくなる」仕組みになっている。

猫の人柄はとても良い。裏もあるだろという文句を言わせないくらい「純粋」で「真っ直ぐ」で「気持ち良い」性格だ。彼の行動、発言に癒される。だから僕らはついつい応援したくなってしまう。

でもカンボジアという国の気持ちは。カンボジアの人の気持ちは。いきなりカンボジアだから「マラソンに挑戦できる」と言ってきた日本人を応援できるだろうか。その挑戦は確かに面白いかもしれないが、その一方で「カンボジアだったらいいだろ」という蹂躙を感じ取ってしまう。いや猫には決して他意はないんだ。純粋にただ「オリンピックに出たい」それを全身で表現しているだけだ。でも純粋だから「何をしてもいい」のかと最近疑念に思っている。「自分が正しいからそれでいいじゃない」はあまりに楽観的ではないか(これは最近見た濱口の「悪は存在しない」でより醸成された僕の気持ちだ)。

たまにスポーツ選手の無邪気な発言にいらっとすることがある。彼らは自分の行為のため「だけに」頑張っている。でもその一方で彼らの「純粋」によって傷つく人がいるのではないか。そのことに対しあまりに無意識であり無邪気だ(それは犯罪的だとすら僕は思っている)。まるでスポーツやっていれば全てが「免罪される」かのように(それは僕の職業のイライラとリンクする。スポーツをやっている生徒のが傲慢で我儘な子が多いと僕は思っている)。

猫は結局カンボジア代表でオリンピックに出て、140人中139位の成績だった。

※この映画は僕の論点とは全く逆で猫を応援する映画になっている(それはそれで感動的だ)。でもなぜカンボジアなんだ。それは「オリンピックに出れるから」だ。僕は「それが出来るためにはどんな手段でもいいじゃないか」という考えには与しない。
ろく

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