ししとう

成功したオタクのししとうのレビュー・感想・評価

成功したオタク(2021年製作の映画)
4.0
「推し」のいる、もしくはいた人、いやいなくても見てほしい。

単語としてはアイドルに対して使われてた「推し」がどんどん広がって漫画アニメのキャラ、お笑い芸人、政治家、なんなら友達でも、今じゃもうどんなジャンルのどんなものでも対象になった「推し活」。
そこに否定的な意見を絶対許さない空気までできあがってる。
人の好きを否定するな、みたいな。
一部は正しいけど結構危ういと思う。

そんなだからどういう風に「オタク」とか「推し活」が描かれるのかちょっと不安ではあったんだけど、思ったよりもずっとフェアで正しくて可愛いドキュメンタリーでした。
何かを強く否定するものじゃなく、やっぱどっちの気持ちもわかるよ〜という。


元アイドルオタク私、劇中で語られるオタクの言葉で何度か死ぬ。
俺も言ってたしやってた、それ。

韓国の男性芸能人捕まりすぎじゃない?と思ったけど日本ではまだまだ表に出てきてないだけなんじゃないかな。
最近ようやく少しずつでてきたけどね。


結局、どれだけ入れ込んでも追いかけてもその人のこと全てを理解できるなんて思い上がりも甚だしいし、こういうことになったときしっかり批判できるようなオタクでいたいねってこと。
だってさ、世の中では結婚するほど信頼して理解してるはずの人に裏切られる話で溢れてるでしょ?
画面越しとかステージ上でしか見てない相手のことを理解できるなんて、そんなわけないでしょ。
でも少しはわかった気になるのもわかる。オタクなので。

ただ、やっぱり我々が見てた推しの全てが嘘ではなくて、知らない面もたくさんあったってだけのことだから、好きでいたことまで罪に感じる必要はないよね。
「本性」ではなくて、犯罪を起こすような人間性すらもその人のほんの一部でしかない。
どうしたって振り返れば思い出は楽しいものばかりなのも仕方ないし、嘘じゃないよ。
推してる間もそこは常に自覚しておくのが健全なんだと思う。

所謂「推し」文化に触れてない人の感想も聞きたいけど、どうだろう。退屈なのかなぁ。


この映画で題材になってるのは「女性のオタクが応援する男性アイドルが起こした性犯罪事件」の話だけど、これ男女逆にしたとき同列に語れる犯罪ってないよなと思う。
男オタクがここまで好きだったアイドルを否定するようになる犯罪、ないよ。
女性としては自分ごとに捉えやすいんだろうし、ちゃんと否定できてるのはちょっと安心した。
ししとう

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