性犯罪で逮捕されたK-POPスターのファンを追ったドキュメンタリーである。
所謂推し活を題材にしており、俳優やミュージシャンといった有名人のファンになった人ならわかるわかる的な作品になっている。監督のオ・セヨンが歌手のチョン・ジュニョンのファンで、チョンが逮捕されたことによって心の整理がつかず、自分と同じような心境のファンにインタビューしていくのだが、それぞれ悲喜こもごもといった様子で非常に厳しいものがある。みんな熱狂していた頃の過去を精算しようとしているが、後悔とか逡巡がにじみ出ていて、オ・セヨンがグッズを処分しようとして思い出を語る時のとても嬉しそうな顔が顕著であるように、思い出と戦っても勝ち目はないわなぁ……とつくづく思った。それでも、好きになったからこそ今の自分があるというのはよくわかるし、胸が熱くなるような作りにもなっている。
劇中で「それでもファンを続けている人がいる」という発言があるが、この映画はそういった人たちのインタビューは行っていない（二次加害を防ぐという意図があるらしい）。そのかわりにパク・クネ元大統領の支持者に視点を向けて、広い射程でファンダムというものをとらえようとしていてなかなかうまいと思った。この場面で面白いと思ったのは、パク・クネをいまだに支持している人たちをジャッジしようとする観客の心理である。真面目に考えると実刑を受けた政治家を支持するなんておかしいと思うし、否定的な側につこうとするが、その現場にいるオ・セヨンは支持者に押されて手紙を書いたり、写真を一緒に撮ったり、同調する素振りを見せる。観客は安易なジャッジをしようとしてもそんなに簡単に否定できるものではないよねという揺さぶりをかけていて、なかなか深いところに踏み込んでいると思った。
この作品はファン同士の連帯を示すのと同時に監督のためのセラピー映画になっていて、最後は本人の思いが総論的になっていて、このあたりはドキュメンタリーとしてはちょっと甘いような気がするのだが、人生のままならない感じもあり、ギリギリ納得できる落とし方ではないかと思った。
