サマータイムブルース

正義の行方のサマータイムブルースのレビュー・感想・評価

正義の行方(2024年製作の映画)
3.0
2022年度文化庁芸術祭テレビドキュメンタリー部門で大賞に輝いた、BS1スペシャル「正義の行方~飯塚事件30年後の迷宮?」の映画化

飯塚事件とは・・・
1992年福岡県飯塚市で小学1年生の女児2名が登校途中に行方不明になり、その後性的暴行を加えられ、殺害され、山中に遺棄されているのが見つかった事件です
その2年後に56歳無職の久間三千年容疑者が逮捕されました

逮捕に至った主な根拠は4つ
①女児の膣内等に残された血液が、久間の血液型とDNA型と一致
②久間所有の車に残された血痕と尿痕が女児のDNA型と一致
③遺棄現場近くに久間の車と似た車が停まっていたという目撃証言
④女児の衣服に付着した繊維が久間の車のシートのものと一致
これらの状況を証拠に1999年死刑判決が下され、最高裁まで争われましたが、2006年上告が棄却され、その僅か2年後の2008年に刑が執行されました
久間は執行の直前まで一貫して無実を訴え続けました

また、この事件の4年前1988年、本件被害者と同じ小学校の1年生女児7歳が、弟とともに久間の息子を訪ねて100メートル離れた久間宅に遊びに行った後に行方不明となる事件が発生していました
久間が最後の目撃者ですが、この事件は進展がなく未解決のままで、今回の事件をきっかけに再捜査が行われました

1992年当時のDNA鑑定はかなり精度の低いものだったことが判明しており、同じ鑑定方法が用いられた足利事件(こちらも女の子が殺害された事件です)では、無期懲役刑が確定した男性が、再審でDNA鑑定自体の証拠能力がない、と2010年に無罪判決が出ています
同じ鑑定方法の飯塚事件では死刑が執行されてしまっているのです
また、目撃者の証言も警察から誘導された可能性が指摘されています

これらにより、飯塚事件も実は冤罪だったのではないかと指摘されてています

久間の遺族は2009年に再審請求しました
もし再審が始まれば、死刑執行事件では史上初めてということになります
第一次再審請求審は最高裁まで争われましたが、2021年に棄却され、現在は第二次再審請求が審理中です

映画は警察側、弁護団側、当時の関係したメディア側の関係者のインタビュー中心に進んで行きます
それぞれが、それぞれの「正義」を信じ、何が真実なのかに迫ります
そこに、さらに久間の奥さんのインタビューなども加わります
どこか一つに比重を置くのではなく、公平な立場で展開して行くのが良かったです

個人的には久間が犯人だろう、とは思いましたが、万一違ってたら大変なことです
無実の罪で1人の命が失われているわけですし、真犯人がいまだどこかで次のターゲットを狙っているかもしれないのです

そういえば警察関係者が面白いこと言ってたな
久間が逮捕されてから今日まで類似案件が発生してない
この手の性犯罪は繰り返し起こすものだから、つまり久間が犯人であろう、と

司法上、久間が犯人であり、死刑が執行されたという事実は変わりありません
新たな証拠でも出てこない限り、真実は闇の中、もはや神のみぞ知る、と言うしかありません

殺害された2人の児童の無念さや、保護者の悲しみ、怒りを思うと悲しい気持ちになります