さいころ

正義の行方のさいころのレビュー・感想・評価

正義の行方(2024年製作の映画)
4.3
真実が何もわからない。リアル版「落下の解剖学」だった。おそらく3部構成で「尋問」「弁護」「検証」になる。みんな迷いがありつつも、おそらく(出演している人に限れば)最善を尽くそうとしたことだけは伝わってくる。一方で怪しい部分も多分に含まれており、そこが議論される部分だろう。

警察は、当時最新鋭だったDNA検査に疑惑が出てきたり、山中から出てきた服が新しかったり、誘導尋問してたり、そもそも現在だと証拠能力がない嘘発見器が利用されたり(これは私個人の意見)…。出演者が仲間・裁判所を信頼しすぎることを感じた(悪いやつは警察だろうといるだろうから)。警察官は自分が振るう力に疑問を持つと、かなり悩むし、判断は別に任せることで、力を抑制するんだろうけど、仲間で話していくと「なんとなく」方向が決まって、その方向性で証拠もそろってしまい、人を裁いてしまうのではないかと感じてしまう。

加害者家族が出てきて、話の食い違いが議論されるけど、彼らも元死刑囚の家族というレッテルから逃れたいだろうから、その証言をどこまで信じればいいのかわからない。あと弁護士は死刑囚と家族のやり取りの食い違いにあまり触れないから、よくわからなくない。

マスコミは「確定」してない事件を本命のように扱った功罪を問われる。そのことは「早まったな」と思いつつ、記者だった人は20代中盤で、まぁそういう思いを抱くかもなと感じる。徹頭徹尾、サブキャップだった人が冷静で、本当に好感が持てた。ブレーキ役って、組織の動きを止めるから嫌がる人もいるけど、なければ暴走を許すからやはり必要だとも感じた。

記者が訴えた「疑わしきは罰せず」を前提とすると、弁護士が戦ってどんどん証拠がひっくり返る中で、国が「死刑」を実行してしまったのは本当に早まったなという感じがする。

弁護士も早めに再審してれば止められたから、「こんなに早く執行されるとは思わなかった」としてるけど、それはもしかしたら怠慢だったのではと感じてしまう(命の大切さを訴えてるんだから)。

なんもわからない。警察が元死刑囚を疑う気持ちも、死刑囚が警察を信頼できない気持ちもよくわかり、真相は藪の中。ただ、煽ってしまった新聞社が悩み悩んで事件を再度振り返ったり、事件に注目して映像作品を製作したりした人たちには敬意をひょうしたい。

決めつけないような映像表現が、「最高裁の正義の女神は目隠ししていない」という言葉を際立たせる。
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