かりんとう

悪女のかりんとうのレビュー・感想・評価

悪女(2023年製作の映画)
3.5
【果たして本当の悪女とは誰か?】

ぽっちゃり不美人さんが法定に立つジャケ写を観た瞬間、瞬時に木嶋佳苗を連想したが、本当にあの事件がモチーフになっていたとは。

同事件に着想を得た映像作品といえば、寺島しのぶ主演の「ソドムの林檎」が思い当たるが、あれも気づけば10年以上前のドラマ。
「ソドム~」は木嶋佳苗をモデルにしているとはいえ、設定は全く飛躍したオリジナルストーリーだったのに対し、今作は容姿も含めてなかなかに忠実と言える。
台湾が日本に関連した映像作品を制作するときのオリジナルリスペクトにはとても好感が持てる。
台湾ドラマ版「模倣犯」は、宮部みゆき先生もきっとお気に召したことだろう。(映画版「模倣犯」の試写会で、先生が途中退席したのは有名な話。そりゃそうだ。あれ酷いなんてもんじゃないもん)
木嶋佳苗が通っていた料理教室はかの有名なコルドンブルーだが、劇中では本格日本料理教室になっているところも憎い。日本料理と練炭の関連性も良い絡み具合だ。


当時、連日ワイドショーを賑わしていたセンセーショナルな事件だったので、かなり鮮明に覚えている。
不器量な故に、男を懐柔する能力を磨いた女。
料理の腕はプロ級。物腰柔らかで相手の警戒心を溶かしていく独特の声色と言葉遣い。そして相手によって手を変え品を変える床上手。
とういことで、当時電車の中で干し柿のようなお年寄りが「俺のところにも練炭持って嫁に来てくれねぇかなぁ!」と嬉々として話していたのが懐かしい。

さて、本作はそんな木嶋佳苗をかなり忠実に再現したシュウランの法定サスペンス…と思いきや、実は巧妙な二重構造になっていた。
先述の「ソドム~」とは全く違った切り口で楽しめた。

主人公のニュースキャスター、リメイを取り巻く2人の男。
婚約者は物語序盤で巨乳ギャルにたぶらかされて結婚から逃亡するというクソっぷり。
その後メソメソ戻ってくるという恥ならぬクソの上塗り。

一方年増で太っていて器量も悪いシュウランが思いのままに男に金を出させ、いともたやすくコントロールしてしまう。
その様に嫌悪感を顕にするリメイだが、これは裏を返せば妬ましいのだ。
自分はジム通いして、ガリガリの身体から少しでも皮下脂肪を減らすべく自分磨きに精を出しているのに、あっさりと婚約者に浮気されてしまう。
こんなドブスおばちゃんに「男を手玉に取る方法」なんざを上から目線で指南されてしまうが、正直それがめっちゃ的を得ている。
忌み嫌う相手が、自分にないものをすべて持っているのだ。

物語は意外な展開を見せて、文字通りリメイは最後に「笑う」のだが…
それはまさしく悪女のそれだった。


劇中では真相があやふやに終わったシュウランの疑惑だが、本物の木嶋佳苗は状況証拠の積み重ねで死刑判決を受け、現在も収監中である。
そしてなんと三度目の獄中結婚を果たしたという。
しかもその相手は妻子を捨てて彼女と再婚したというから驚きだ。
事実は小説よりも奇なり…。

あ~女って諦めたらそこで試合終了なんだな(?)