千

燃えるドレスを紡いでの千のレビュー・感想・評価

燃えるドレスを紡いで(2023年製作の映画)
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廉価な衣服は古着として回収されても需要が無く、最終的にケニアなどで廃棄されている。
と言ってもケニアには焼却施設がないので、他の衣食住のゴミと共に山積みにされており、悪臭を放っている。。。

着なくなった服はリサイクルショップに持って行き、なんとなく環境に良いことをした気になっていたし、衣服を欲している人の手に渡っていると思ってたのでこの事実は衝撃だった。

「服は飽和しているからもう作らないで」
一般人の私でもぐさりと刺さる現地住民のこの言葉、服の生産者である中里さんには一層刺さっただろうし葛藤は計り知れない。

それでも、ゴミ山を見た後に訪れた砂漠の奥地で、干ばつにより苦しい生活を強いられるなかでもカラフルなビーズの装飾品を身につけたり皮で作った服を纏ったりする人々を見て、人間が何かを纏う根源的な欲求のようなものを見た気がして勇気づけられ、今回のコレクションへとつながっていったとのこと。
「合理的に突き進んでいくと無くなってしまうようなものが、未だ残っている。その現状を見て、人間が生きていく上で、衣服で自己表現をすることはとても重要なんだということを体感し、絶望しかなく落ち込んでいた気分が少しやわらいだ。」
服好き故、ファッション業界の環境負荷について学ぶたびに葛藤を抱いていた自分も明るい気持ちになれた。

「お金ではなく、問題解決のために自分の時間をどれだけ費やせるかが問われている」「リソースを上限まで使ってしまっているから、あと使えるとしたら自分の体力くらい」と言い、寝る間も惜しんでコレクションの準備に勤しむ中里さん。
そんな風に熱量をもって仕事に取り組む姿はかっこよく眩しい。

是非VOGUEの記事も読んでください。
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