やむちゃ

盗月者のやむちゃのネタバレレビュー・内容・結末

盗月者(2024年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

備忘録
2024.3.5 大阪アジアン映画祭(ABCホール)で鑑賞。

監督はユエン・キムワイ、出演はイーダン・ルイ、アンソン・ロー、ギョン・トウ(この三人はMIRORというアイドルグループのメンバー)、ルイス・チョン、マイケル・ニンなどのサスペンス・アクション作品。

上映後にはユエン・キムワイ監督とヤクザの組長役の田邊和也さんが登壇、質疑応答などがあった。

最近は比較的低予算で良質な小品が多くなっていた香港映画だったが、久しぶりに、かつての黄金時代を彷彿させる派手な作品が出てきたなという印象。

アンティーク腕時計を”正規部品を寄せ集めカスタマイズして”偽造(正規部品を使っているのでコピー商品ではないが、部品を入替えているので本物でもない)していた主人公が、悪い時計ディーラーに脅され、ベテランの泥棒二人組(実質リーダーと爆破のプロ)、駆け出しの鍵師と組まされて四人で東京の時計店にあるピカソの腕時計を盗むことになるというお話。

なるほど、劇中で出てくるある腕時計に絡んでの「盗月者」なんだね。
突拍子もないお話に思えて、意外にも実際のエピソードをいくつか組み合わせて作られたらしい(監督談)

現地香港で旧正月に公開され大ヒットしているらしい。その辺も頭に入れて観たが、うーん、そこまでヒットしたのは多分にMIROR人気のおかげかなぁ。
このMIRORは2018年11月にデビューした香港のアイドルグループ。
私が最後に香港に行ったのが2018年3月なので、彼らのブレークは知らなかった。
少し調べると、当初は韓国や日本のアイドルの模倣と見られていたが、民主化運動やコロナ禍など香港を取り巻く影響がさまざまに絡み合って大ブレークしたようだ。

作品としてはまあまあ良くできている。騙し合い、時計を盗む際の緊張感、派手な銃撃戦などがうまく纏まっていて、観ていて楽しい。
四人組は、1(主人公)+2(泥棒)+1(鍵師)といった感じで、決して信用し合う仲間でもなく、いつ裏切るかわからない状態なので、最後まで気が抜けない。
金庫の鍵を開けるシーンは、聴覚、触覚に頼るアナログな手法を、CGを使ってわかりやすく視覚化しており、観ている側もハラハラする。
銃撃戦は、まさに往年の香港映画をのように派手で、「どれだけ撃つねん」とツッコミたくなるような銃弾の雨あられ。思わずニンマリしてしまった。

東京でのロケは日本人の俳優さんをたくさん使っており、かつての「大福星」、「極道追跡」、「東京攻略」に比べて、日本人でも”あまり”違和感なく観れるようにはなっており、この辺も時代の流れを感じた(臨時ニュースのアナウンサーがカタコト&棒読み過ぎたけどw)。

黄金期の香港映画では、このぐらいのデキの作品はたくさんあった(演出や脚本は今作の方が格段に進歩しているけれど)。おそらく90年代であれば、(ヒットはしただろうが)よくできたアクション映画の1本として、多くの作品の中に埋もれてしまっただろうなとも思った。

とはいえ、こうした外向きな作品が作られるようになってきたことは、香港映画ファンとしては大変嬉しい。かつての勢いを取り戻せるよう、ぜひとも頑張って欲しい。

MIRORのメンバーは若く、演技もまだまだだけれど、なかなか新陳代謝が進まない香港芸能界に久しぶりに現れた期待の星なので、たくさん経験してビッグスターになって欲しい。

映画祭という文字どおり「お祭り」にふさわしい楽しい作品だった。

※下水道に入る穴を開けるために向かった地下街が、先日観た「PERFECT DAYS」に出てきた居酒屋さんがあった地下街みたいに思えたが、東京の土地勘がないのでよくわからない。誰か教えてください…。
やむちゃ

やむちゃ