hasse

めまいのhasseのネタバレレビュー・内容・結末

めまい(1958年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

演出5
演技4
脚本5
撮影5
音楽4
技術5
好み5
インスピレーション5

これは映画史に残る大傑作。ヒッチコックのベストは『サイコ』だったが、『めまい』に置き換わったかも。映画館で観たかった、と悔やまれるが、劣悪な保存状態だったフィルムを2年かけて修復した方々のおかげで、1958年の作品とは思えない鮮明な映像で観ることができた。とても感謝。

いいショットがバンバン出てきて痺れるのだが、ヒッチコックの熟練の演出もさることながら、サンフランシスコの好ロケーションも寄与している。
街中でスコティがマデリンの車を尾行するショットは、交差点が多くいりくんだ区画が迷路のような様相を呈しはじめる。また、坂道が多い地形のため、マデリンの車を背後から映すショットでは車の先の遠景も収まって深みのある構図が成立している。
それから、車で少し遠出すれば荒い波打ち寄せる海も、鬱蒼とした森もある。どちらもマデリンのような自殺志願者にとっては魅惑的でフラフラと行きたくなる場所だ。大樹に遮られてろくに日差しも差さない森では、マデリンがちょっと歩いただけで姿が見えなくなって、スコティが焦り出すのが説得力があるショットに仕上がっている。
前半は街(迷路=心理的葛藤)と海/森(心理的に追い詰められた状態)というロケーションがマデリンの心理状態とリンクして登場するのが素晴らしく綺麗である。

マデリンという「幻想」を愛した男と、マデリンという「幻想」になりきろうとした女の屈折した恋愛関係が重層的な奥行きを生んでいる。
スコティのステディ的な女性が、その「幻想」を茶化す役割を担うのだが、それをマジ顔で否定し、彼女から離れていってしまうスコティに、静かな狂気と悲哀を感じさせる。非常に重要なポジション。

観てから時間が空いてしまったのもあり、全ての感想を書ききれなかった。だが、映画としての強度が段違いだ。『めまい』というこの映画にベタぼれした!(原題VertiGoもめっちゃカッコいい)かなうならば、二回目を劇場で見たい!!
hasse

hasse