不在

めまいの不在のレビュー・感想・評価

めまい(1958年製作の映画)
4.2
ミステリーとしては多少破綻しているが、それを感じさせない技術に価値がある。
作品に漂う謎はあくまで車輪であって、動力となるのは人間の様々な側面だ。
主人公は独身の年寄りで精神疾患持ち、しかも無職というアメリカ人の思い描くヒーロー像とはかけ離れている。
彼の華々しい警察官時代というのもほとんど語られず、徹底して英雄性を排除されている。
ある意味でありふれた人間だからこそ、観客は彼の身を案じるのだ。
この意外にも繊細な誘導によって、多少の矛盾は飲み込んでしまうようになる。
謎という車輪、人間という動力が我々を操り、ゴールまで目が離せなくなるのだ。
不在

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