Keigo

めまいのKeigoのレビュー・感想・評価

めまい(1958年製作の映画)
4.3
フォローさせていただいているbennoさんがヒッチコックマラソンを軽快に走っていて、そういえばヒッチコックもあれもこれも観たいと思っているのに全然観れてないな〜と思い至り、とりあえずベタなところから少しずつでも攻めていくことに。

ヒッチコック作品は『サイコ』に続いて二作目。最近だとパク・チャヌクの『別れる決心』の時もそうだったけど、何かと引き合いに出されることの多い印象の『めまい』。

まずこのキービジュアルがいいよなぁ。
そしてオープニングからクセすごい!良い意味で!不穏な音楽、女性の顔面、口、目の接写…そして次々に現れる回転する幾何学模様へと吸い込まれていく…ド頭からセンスだだ漏れ〜。

本編始まってまず最初に思ったのは、ジェームズ・スチュワートのスーツの着こなしが最高にかっこよかったこと。あのエンジみたいなうっすら色付いたスーツも、ネイビーのスーツも最高に決まってて痺れた。あとあの透き通ったブルーの瞳も。後々登場するキム・ノヴァクの匂い立つエレガンスも凄まじくて、ファッションの部分でもかなり見応えがあった。

今観ても新鮮さを失わないクリエイティブな映像表現も頻出していて、ジョンが塔から下を見下ろす時のあのショットをはじめ、レストランでのマデリンの登場シーンや車を走らせている時の俯瞰ショットなど、どれも素晴らしい。ジョンの夢のイメージの表現では、ナチュラルにアニメーションまで溶け込ませていて驚いた。

ストーリーについても中盤のある告白によって思考の起点を失ってしまうようで、まさに螺旋のように深みに入ってしまう入り組んだ構造になっていて恐れ入った。トラウマというかリビドーというか…ミッジのような人と一緒にいられたらそれでいいと自分でも分かっているはずなのにこうなってしまう男の性…女の謎…抗うことの出来ない衝動。そういう意味ではすごく男性的な作品といえるかもしれないし、それは今の時代にどうなんだというのもあるのかもわからんけど。

『サイコ』の時はそこまで感じなかった気がするけど、基本的に画面が明るくて彩度が高い印象。ミッジの家の黄色い椅子、レストランのギラついた赤い壁面、マデリンの緑のドレスと車、花のブーケなど主張の強いはっきりした色に光がしっかり当たって画面がとにかくビビッド。これがヒッチコックの画作りのスタイルなのかこの作品に限ったことなのかはまだ分からないけど、そこはあまり好みの質感ではない…

ただ自分の場合、理由の説明しづらい、より感覚的な「好き・嫌い」がスコアを付ける時にかなり影響しているので、その部分での加点はなかったのにそれでも4.3という感じ!傑作だと評されるのも納得でございました!
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