豚肉丸

ある方法での豚肉丸のレビュー・感想・評価

ある方法で(1977年製作の映画)
4.6
革命後のキューバを舞台に、価値観の異なるカップルの男女がすれ違いを起こすお話

落ち着いた映画かと思いきや突然ジャンプカットによる激しい勢いの演出で幕を開けて滅茶苦茶笑った。フィクションとドキュメンタリーが融合し、革命直後のキューバの様子を直接描き出しているのが面白い。

主人公である女性教師は「独立した女性」というフェミニズム思想を持っており、マスキュリズム思想の彼氏と摩擦が生じている。一方で彼氏の方も労働の面では進歩的な価値観を持っており、女性教師の主人公もまた古い叱責による教育方法で他の教師から注意を受ける。と同時に映画は革命後のキューバの様子を映し出し、革命によって教育水準が上がり、社会の「限界」に置かれていた人達が社会に復帰した、という革命の良い部分を描きながらもその一方で革命による混乱、女性達の地位などのまだ残っている問題も描かれる。このように旧時代的な価値観と進歩的な価値観のすれ違いが映画の中で強く強調されており、「労働者」「教師」としての立場から革命後のキューバの様子を等身大に描き出そうとする試みがなかなか面白い。

「言い訳するな!」と責任追及する男性→鉄球による建物破壊、に移る冒頭の衝撃的なジャンプカットもだけど、様々な手法や様々なスタイルの演出が70分の枠の中に押し詰められていて映画自体もまた一癖ある。ドキュメンタリータッチのフィクション、突然挟み込まれる歴史的背景の説明、矢継ぎ早なショットで描く人物像、人物説明ナレーション...これら演出によってテンポの緩急が異様に激しくなっているのが面白い。物語で旧時代と進歩的な価値観のすれ違いを描きながら、映画もまた1つに囚われない様々なスタイルを詰め込む...
面白かった!
豚肉丸

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