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遠すぎた橋のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

遠すぎた橋(1977年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1944年9月、ノルマンディー上陸作戦に成功した連合軍が、年内の戦争終結に向けて行った二つの作戦(マーケット作戦とガーデン作戦)を、オールスターキャストで描く、英国・米国合作の大作映画。軽快なマーチの響きに乗せて、俳優使いの上手いリチャード・アッテンボロー監督らしい映画になっている。

マーケット作戦は、イタリア、フランスなど欧州南部で敗戦が続くドイツ軍を更に追い詰めるため、イギリス軍、アメリ軍の空挺師団に、ポーランド軍も加え、大量の兵士をパラシュートでベルギー、オランダに降下させる作戦。
次に、降下した兵士たちが国境線の橋を確保、敵陣を突破して物資補給のために合流するイギリス機甲軍団と共に、ライン河を渡りオランダを解放しようというガーデン作戦が敢行されたのだが…

天候不良でいつまでも飛行すら出来ないポーランド軍の落下傘部隊、無線の故障の中敵陣に包囲される物資補給部隊、ドイツ軍の思わぬ反攻に苦慮する部隊など、二日で終わるはずの作戦は停滞し、三日、四日…1週間を超え、連合軍兵士に死傷者が増大、作戦は無謀・極まりない事態に陥っていく。

映画の良い点は、物量の迫力、ものすごい数の落下傘部隊の降下場面や、橋の確保のための戦車戦は大掛かりなセットで、迫力十分。迫力満点の戦闘場面は21世紀でも十分通用するレベルだ。
また、当時のイギリスの著名男優は全て出演しているのではないかと思わせる程にキャストは豪華だ。
但し、オールスターキャストの群集劇の為、物語に軸がなく、各地の戦闘の積み重ねに過ぎず、薄っぺらい印象は否めない。有名スター達にはそれぞれ見せ場があり、死ぬことはない。

1977年、初公開時に映画館で鑑賞、2020年NHK-BSで放送時に再鑑賞。感想は当時も今も変わらない。群像劇として描いたため、見所は多いが一つ一つのドラマが浅く、戦争を深く描き切れていない。60~70年代、第二次大戦の欧州戦線を描いた大作映画としては『パットン大戦車軍団』と比べると見劣り感は否めない。
だが、映画の最後、負傷したイギリス兵たちの「Abide with Me」の合唱から、画面は民間人に切り替わり(ローレンス・オリビエの医師と連合軍に家屋を提供した女性リブ・ウルマン)、そして、幼子の遠景ストップモーションで終わる幕引きは、流石にアッテンボロー監督、声高ではない密やかな戦争批判になっていて見事だ。
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