ミシンそば

コーカサスの虜のミシンそばのレビュー・感想・評価

コーカサスの虜(1996年製作の映画)
3.4
レフ・トルストイの原作を、現代の紛争(それも、製作当時戦争真っ只中だったチェチェン紛争)に翻案した結構野心的な作品。
昨今の時代背景的に、ロシア人の現代まで脈々と受け継がれている残虐さをどうしても感じてしまう。観る時期を間違えている感はやっぱり否めない。

ワーニャと一緒に捕虜になったサーシャ准尉も、映画を観進めるうちにいい奴なのかもと思える瞬間はあったが性格は横柄で、自身を捕虜としたチェチェン人の文化などには全く敬意を表してない感じが滲み出ている。
それは他のロシア人全体にも言えることで、兵卒のワーニャだけが例外で、異端と言っていい。
チェチェン人もロシア人に対して怨念を容赦なく向けている。

でも、この映画に悪はいない。
「戦争だから」と言う諦念や相手の可能性を狭める決めつけだけで、そこに悪意がないことは明白だろう。
悪意がないけど決めつけはある、だからこそこの映画は真っすぐ最悪な結末へ向けて突っ走る。
映画全体の流れは素朴で能天気、間抜けな動作から笑いを誘うシーンもあるけれど、後味はその一点だけで最悪になる。

レフ・トルストイの原作の方は未読ではあるが、脚色は多分それほどされていないのだろうな(そう言うことも感じられた)。