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コーカサスの虜のRのレビュー・感想・評価

コーカサスの虜(1996年製作の映画)
5.0
素晴らしすぎる!!! 大学時代にはじめて見て、今回で6回目。おそらく知名度も低いし、めちゃめちゃ地味な作品で、1回目見たときはよーわからん部分もあったんやけど、なぜか深く心に突き刺さり、DVD買って、以来、見るたびにどんどん深く深く突き刺さってくる。コーカサスの山岳にあるチェチェン人の村の捕虜になったロシア人ふたりが主人公。チェチェン紛争の実情がわからなくても、その二者が対立して紛争してるってことだけわかってれば、十分理解できる。ふたりをチェチェン人のおっさんが自宅に監禁して生かしてやるのには理由があって、おっさんは自分の息子がロシア側の捕虜になってるので、そのふたりと交換したいと望んでいる。だからその交渉が成立するまで、ふたりを生かしておかなければならない。つまり、ふたりの世話をしなければならない。その役を、まだ幼い娘に任せるのです。すると、片っぽは若くて心優しいイケメンなので、娘は家畜みたいに扱いながらも、うっすら、ほのかな惚れ心みたいなのが生まれる。もうひとりも好戦的ではあるけど、やな奴じゃない、ふつうの漢やから普通に村の人と、打ち解けはじめる。でも、やはり、二者が敵同士であるのを変えることはできない。だから、とてもとても哀しい結末を迎えることになるのです…。人間と人間のふれあいの上に生まれる自然な愛情すら存在することがゆるされない、民族同士の対立。そのやるせなさを、雄大な山岳地帯のうつくしい景色のなかで、ユーモアを添えているがゆえの深い深いペーソスをもって、しみじみと描きだしていく。このテイストがあまりにもツボに入りすぎて見ててマジ苦しくなってくる。最後の方、気づけば淡い哀しみが全ハートに染みわたって、呼吸が浅くなり、涙にならない気持ちをのみこむことができないまま、うううううううううって状態でおわります。ほんっとに哀しい。こんな気持ちにさせる映画はほかにないし、こんな気持ちになるのはこの映画を見たときだけ。なので、どうしても、五つ星にせざるを得ない。ほんとにすばらしい。劇中流れる音楽もすべて最高やし、彼らが口ずさむ民謡のメロディもめちゃめちゃ耳に残る。そして何より、監督の息子、セルゲイボドロフjrの見た目が良すぎる。真っ直ぐ誠実さのこもった上目遣いがすっきり美しく、笑ったときの口の傾きが殊に魅力的。相手のオレグメンシコフも文句なしのイケメンで、ふたりがからんでるシーンのほほえましいことといったらない! 少女とjrの心の通わせ合いも心の底からあったかい気持ちになる。だからこそ、うううううと胸がしめつけられるねんなー。何もかもが淡い味わいながら、最高の隠し味になっていて、見るたびに哀しい旨味が染み出してくる、ほんとに極上のスルメ作品だと思います。コーカサスの虜の虜になってしまってます。今後も何度も見ることでしょう。
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