真魚八重子

土砂降りの真魚八重子のレビュー・感想・評価

土砂降り(1957年製作の映画)
3.0
良いタイトル。シンプルで、しかし良いことは起こらないことは予想がつく言葉。
全部男性優位主義のために起こっていることで、妾を持つのは大声では言えないが、二つの家庭を養える自分の甲斐性を誇るもの。本妻や母が憎むべきはこの構図なのに、社会観に染まっているので、妾に「うちの人(息子)を誘惑して!」と怒鳴り込んで手を切らせようとする。
佐田啓二の母の容赦ない職業差別。連れ込み温泉旅館の娘なんかに生まれたくはないし、妾の子なんて立場が誇れるわけがない。佐田啓二もそれを知ったとたん、岡田茉莉子から離れていく。

この映画の目線は佐田&岡田の若い二人にはない。むしろその親世代の、長年愛人関係でやってきた二人のつながりだ。山村聰と沢村貞子が夫婦のごとく三人の男女の子どもに恵まれて、幸せに生きてきた方が異様な気がする。佐田&岡田の一件がなかったら、ずっと第二の夫婦としてやっていったんじゃないだろうか。生き続けるには佐田と岡田茉莉子は美しすぎる。二人の間の、息子と次女の近親相姦的な親密さも妙だ。
真魚八重子

真魚八重子