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土砂降りのdiesixxのレビュー・感想・評価

土砂降り(1957年製作の映画)
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蒸気機関車をバックにしたオープニングクレジットがかっこいい。やはり蒸気機関車は映画的だ。その後も何度も登場。一つの映画の中で「蒸気機関車のある生活」がこんなに印象的に描かれている映画を初めて見た気がする。
自宅で連れ込み宿を営みながら暮らす妾の一家。長女の岡田茉莉子は、役所勤めで同僚の佐田啓二と結婚間近だったが、出自と実家の仕事を問題視されて破談になってしまう。これをきっかけに歪な家庭が少しずつ崩壊していくホームメロドラマ。
『夜の片鱗』に胸糞悪くなりつつ、それなりに感銘を受けたので同じ中村登の配信作を。妾の子どもは、好きで妾の子どもに生まれているわけでもなかろうに、容赦なく浴びせられる社会的差別に心削られる。温泉マークに、そんな不文律が込められていたとは知らなんだ。この作品自体も、何の直接的な描写がないにも関わらず、成人指定になったというから、当時の社会の視線が想像される。
若い桑野みゆきに、妾文化の(というより、その社会的な位置付けの)身勝手さと理不尽さを批判させつつ、それまで「閉経した母親」に徹していた沢村貞子が「別れたくない」と男に泣きつき、急激に一人の女と化す描写にはかなりハッとさせられる。このあたりの描写は中村登の凄みなのかなと思う。
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