菩薩

土砂降りの菩薩のレビュー・感想・評価

土砂降り(1957年製作の映画)
4.2
看板に偽り無く何とも不安げな豪雨が降る。岡田茉莉子と佐田啓ニのメロい部分にばかり目が行きがちだったがあくまで仮想敵は家父長制社会か。昨今の婚姻率や出生率の低下をその崩壊に向けての一過程と見れば微かにポジティブにも捉えられるが、現状その最たる理由は貧困化なのであって、倫理観も道徳感もバグっているとは言え少なからず豊かな時代があったもんだ…と感じてしまう自分が悲しい。個人間の問題である筈の結婚に背後の家を絡ませ確実に存在し得たはずの幸福な未来をまた一つ腐らせていく。女手一つで我が子を育てた母親のあまりにも父親的な態度、何も言えずにただただ運命に身を任せ自分の人生を捨て生きて来た母親が最後に見せる女としての矜持、家父長制社会は何も「男」だけが維持・強化して来たものでは無いと言うのがよく分かる。看板に偽り無くこれでもかと言うばかりに激しい雨が降る、これを日本の悲劇と呼ぶならば最後母親は線路に飛び込まねばならないが、そうはさせない違う未来を見ている、ここで捨てられるのはあくまで父親である。
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