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蛇の道のinoriのネタバレレビュー・内容・結末

蛇の道(2024年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

リメイク元の『蛇の道』(1998)をかなり忠実になぞっていて、台詞や演出がそっくり同じ箇所も多かった。

舞台がフランスで主人公が柴咲コウなので、1998版のVシネ感がなくなって代わりに鬱蒼とした美しさのある作品になっている。
 
顔をしかめたくなるような演出とか設定とか厭さは元の通りあるけど、児童虐殺ポルノが臓器摘出に変わっていた。
さすがにあの内容はこの時代では憚られるのかなと思った。フランスというのもあるし。

柴咲コウ演じる小夜子の蛇のような眼差しが印象的。

カメラワーク的に小夜子に拉致られ拷問されそうになる側の視点に立てるシーンがあって、冷たい憎しみのこもった視線を大画面で浴びながら指を切られそうになるのが良かった。

それから西島秀俊の使い方も贅沢で、小夜子が精神科医としてこの人とやり取りするシーンはドライなはずなのにウエットというか、何とも言えない色気があって?好き。
ここと夫とのシーンだけ日本語になるのも別の映画になったみたいで不思議な感覚になったけど、日本語だと少し印象の変わる小夜子が映画に変化をつけていてよかった。

1998版の塾のシーンが今回の精神科のシーンであって、また違った異次元的日常の表現で面白かった。

小夜子が出身と家族のことを訊かれて話している時、偶然かもしれないけど役者本人の話じゃんと思った。
「困った人ですね」が良かった。

短いシーンだけどここでの会話が物語を貫くキーワードになっているので印象に残る。
つまり「本当に怖いのは終わらないことでしょう」というのが、この作品の終わりのない絶望と虚無というテーマだと見て取れる。

最初に死んだ男をナイフで何回も刺すところは基本感情の見えない小夜子の憎しみと怒りが露わになるシーンで、アップで映されるのがすごく良いんだけど、二人目は痛めつけようとしてやっぱりやめるのが、段々と復讐に無意味さと虚無を感じ始めているんだなということが伝わり辛くなる。

このシーン必要か?みたいなシーンが割と長くあったり何回もあったりするのが黒沢清監督作品あるあるだと思うのだけど、今回もやたら不穏なルンバとか3人目のしぶとい取っ組み合いとか味が出てて面白かった。

アルベールも1998の香川照之に負けず劣らず小心者で他責思考かつ無責任なくせに優越感を求めたり自分を正当化したり自分の存在意義を確かめたいダサさ醜さがしっかり出ててとても嫌だった。

無駄に恋愛的要素は入れないで欲しいと思っていたし入れるとも思ってなかったけどアルベールから小夜子への好意の表現程度に収まってて安心した。

1998版より物語がわかりやすくなっていたし、ラストもオチらしいしっかりしたオチになっていた。

死体が連なっていくやつとかも1998版と同じくあってシュールだった。

今回『蛇』について、男が小夜子に「その蛇のような目」とはっきり言ったり最後のシーンとか特にだけど途中もけっこう小夜子の目がクローズアップされてそこに『蛇』のモチーフを重ねているのも柴咲コウを起用している意味が厚くなって良いなと思った。

拉致用の袋も蛇を連想させる形になっていたり車で走り去る道がやっぱりくねっていたり『蛇』はかなり意識されていると思った。

フランス語によって無機質さや冷たさが増すようで、作品がより上質に感じられる。

男が小夜子をマドモアゼルと呼ぶんだけど字幕が「お嬢さん」なのが好きだった。

続編も作れそうな終わり方だったけど、『蜘蛛の瞳』にするなら最初にあっさり夫を殺すのかなーとか思った。
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