ルサチマ

ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへのルサチマのレビュー・感想・評価

3.0
ドキュメンタリーそのものに元々胡散臭さを感じているが、この映画も例外ではなく、被写体とそれなりに丁寧な関係は気づいた上で撮影はしているんだろうが結局のところカメラの後ろからは何もリスクを負おうとしていないということに嫌らしさがある。最後の演奏シークエンスも予定調和な気持ちよさを与えはするが、音と画面の編集も佐藤真的なものを引き継いではいるにせよ、その範疇を超えるものではないし、扱う題材と撮影方法、編集技術がどれも小慣れた方法論から抜け出そうとしないということが、この作家の狡さだろう。震災以降に続出した「街の記憶」と個人史をクロスさせる語り口そのものが、コロナ禍という時代を経てよりこの国の小ささを加速させてきたのではなかったか。。
いい加減過去に取り上げてきた題材そのものへアンチテーゼを投げかけるくらいのことをしない限り(もちろんそれもまた現実に対する鏡でしかないにしても、現実に対して幾度となく乱反射を起こす可能性はあるはずだ)、結局のところ袋小路へ向かうだけで、将来への有効なビジョンを示すことにはならないだろう。
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