スギノイチ

愉快な極道のスギノイチのレビュー・感想・評価

愉快な極道(1976年製作の映画)
3.5
役名も異なるし、シリーズに数えられているわけでもないが、『極道シリーズ』の後日談的な内容でもある。
豪傑かつ間抜け、スケベかつ純情という『極道』の島村清吉親分のキャラクターそのままに、「もしも引退後の島村親分がタクシー運転手になったら?」なんて副題を付けてもしっくりくる。
大袈裟に言ってしまえば、マックイーンの『ハンター』やイーストウッドの『許されざる者』に相当する作品だ。

面白いのは、一生懸命カタギになろうとする若山富三郎の滑稽さと哀愁だ。
一般社会から大きく逸脱した怪物の癖に社会の枠に収まろうとするミスマッチを面白おかしくコメディにしている。
泉ピン子らが演じるタクシー会社の面々は個性豊かで、ホームコメディ的な要素もあり。
恋敵の蜷川幸雄や、桂三枝や寛平師匠などの賑やかしも豪華。

「元ヤクザのタクシー運転手」というギャップに加え、「若山富三郎がタクシー運転手」という二重のギャップを設ける事で面白さが増している。
極道は引退しているといいつつ、そこは東映映画。観客のストレスになる展開は一切やらない。
最初こそ下手に出ているが、チンピラのイチビリが許容を超すと(そんなに我慢してないのだが)圧倒的暴力で全滅させてしまう。
さらに、三田佳子演じるヒロインへの純情ぶりは『極道』時代より酷くなっている。

ヤクザとのイザコザがどんどん悪化してくると、最終的にはいつもの『極道』時代の展開に逆戻りしてしまう。
それどころか、飛んだり跳ねたり敵を空高くブン投げたり、なぜかマンガチックにパワーアップしている。
『グラントリノ』のような渋さは1ミクロンも無いのだが、これでいいのだ。
これこそ東映と若山富三郎のプログラムピクチャーだから。
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