ブルーノ

イカとクジラのブルーノのネタバレレビュー・内容・結末

イカとクジラ(2005年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 ノア・バームバック最新作『ホワイトノイズ』の予習も兼ねて久々の鑑賞。初見時より映画の知識も増えたので固有名詞で笑えたし、いまだに子どもたちの視点で見てしまう社会的に全く成長していない自分にも気づけた。

 初見時には気づかなかったのだが、本作はオイディプス・コンプレックスも描いているのではないだろうか。ジェシー・アイゼンバーグ演じる長男は、いわゆる“父殺し”を果たせていない(あるいは家族の存続のため無意識に父側につくしかない)父親に陶酔する息子として描かれている。ずば抜けた批評家でもある父の価値観を内面化し、それが揺るがせられそうになると擁護する始末。好意を寄せる女子大生・リリに手を出す父の姿を見て、はじめて“父殺し”を達成するのである。

 もう一つ印象に残ったのが、ローラ・リニー演じる母の描写である。長男と母親の口喧嘩のシーンで、明らかに“母”ではなく“一人の人間”として怒り、明確な敵意を持って口撃を繰り出す瞬間が捉えられており、このニュアンスを的確に映像に収める手腕に驚いた。自分にも似た体験があり、あの時のダメージと怒りが蘇ったのである。同時に、本作で“母”という立場にもまして“一人の人間としての自分”を尊重する人物として描かれる母親像に対し、自分が未だに批判的な違和感を持っていることも確認できた。根深い。反省。
ブルーノ

ブルーノ