ワンコ

ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版のワンコのレビュー・感想・評価

4.2
【究極的循環型ディストピア】

チャールトン・ヘストンが主演のSF娯楽作品の代表作と言えば、この「ソイレント・グリーン」と「猿の惑星」だと思うが、こちらの方はB級感もあってか、日本ではかなりマイナーな扱いかもしれない。

どちらの作品も未来に起こるであろう人間が原因の問題をテーマにしているが、もうひとつ、チャールトン・ヘストンが演じる主役がエンディングで叫ぶのも共通の特徴だ。

それに、この頃に想像の中にあった未来のディスプレイはまだ真空管型のようでとても分厚いのもちょっと笑えるけど、シェイプは流線型でいかにも未来的だ。

テレビに押され気味だった映画が復権を果たしたという70年代(1973年)の作品で、2022年と、約50年後の未来を描いている。

人口爆発、食糧不足、格差。

前者二つは、今や新興国や発展途上国の問題だが、格差は先進国の中でも大きな影を落としている。

日本やヨーロッパは人口減少が問題視されているのだと思うけれども、インドやアフリカ諸国など人口爆発が続く国々の未来は本当に明るいのだろうか。

先進国製品の大消費地としてもてはやされているだけで、そこに本当にロジックは存在しているのだろうか。

日本の出生率の低下は確かに問題のように感じるが、食料自給率の低くさは政治家や政府の怠慢だし、農地改革や効率化は喫緊の課題で、エネルギー自給率の底上げと並行して取り組む問題だと思う。

安価で安定したエネルギーと、食料維持は必ず日本の付加価値を上げるように思うからだ。

実際、ヨーロッパはEU単位でこうした問題にすでに取り組んでいるように思う。

(以下ネタバレ)

映画は、人口増加 → 海も利用できなくなって、プランクトンも食べられず、そして、人間を加工して食すことになった世界を描いているのだけれども、ある意味、究極の”循環型”の悍ましいディストピアで、ソルが安楽死の施設で息を引き取るなど、日本で言ったら高齢者に対するエイジハラスメントも想起される場面があって、よく練られたストーリーだったんだなと改めて考えたりもする。

まあ、現実社会の食料問題を考えたら、家畜が食べる飼料の代わりに人間が食べる大豆なんかの食物性タンパク質生産を増やして、コスパもタイパも悪い食肉生産を減らしたり、人口肉や、昆虫を食べるようになるんだろうななんて思う。

流れるベートーヴェンの「田園」もどこか皮肉が効いている気がする。

結構興味深いので4Kリマスターリバイバルのこの機会に是非。
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