クラウドアトラスみやちゃん

渇愛の果て、のクラウドアトラスみやちゃんのレビュー・感想・評価

渇愛の果て、(2023年製作の映画)
4.0
【一言感想】
「BIRTH」生涯に遭遇するあらゆる大惨事のうち、最初で最悪のもの。『悪魔の辞典』A•ビアス
本作を鑑賞後、脳裏に浮かんだのはこの言葉だった。

【あらすじ】
眞希、里美・桜・美紀の4人は高校のミュージカル部からの親友。眞希は「絶対に子供が欲しい!」と言い続け、“普通の幸せ”を夢見ていた。アラフォーとなり、念願の妊娠。出産予定日の2週間前、体調不良によって緊急入院となる。その際、出生前診断を受けるが、結果は陰性。胸をなでおろした眞希であったが、いざ出産を迎えると、赤ちゃんは3万人に1人という難病を患っていた。。

【感想】
アラフォーとなった眞希念願の妊娠。そのことは、本人達のみならず親友達や両親、妹にとっても喜ばしいものの筈だった。しかし、生まれてくる我が子に障害がある可能性が出てきたことから取り巻く世界は一変。厳しい現実と向き合わなければならなかった。
そうなると現実は待ってはくれない。次から次へと難しい選択を迫られる。

そんな現実を出産を経験していない我々は知らない。多くの人には出産には幸せの象徴であるような良いイメージしかなく、こうしたマイナス面まで考えが及ばない。しかし、劇中にもあった様に障害を持った子供が産まれる確率は5%。20人に1人、クラスに2人は障害を持つ親となる、となれば決して他人事ではない。

本作は妊娠・出産に於ける暗部にスポットを当てた日本映画初の映画である。出生前診断の是非、優生思想の問題、生命の選択の問題、障害児の社会的受入れの問題に切り込んだかつて無い有田監督の意欲作だ。
かと言って、お堅い映画になっているわけでもなく本質的な人間愛を伝えるヒューマン映画でもある。
このテーマを手掛けてこれだけ温かみのある映画に仕上げることができたのは、有田あん監督の人間を観る目がそうさせているのだろう。
人として、映画監督として最も尊敬に値する方である。

【CAST】
有田あん 山岡竜弘
輝有子 小原徳子 瑞生桜子 小林春世 大山大 伊藤亜美瑠 二條正士 辻凪子
烏森まど 廣川千紘 伊島青 内田健介 藤原咲恵
大塚菜々穂 峰つばき 工藤成珠 柳明日菜
大木亜希子 松本亮 関幸治 みょんふぁ オクイシュージ