ブラジル映画祭in東京、2024にて。
手ぶれカメラ、ざらざらした画質、時折焦点があやふやになるショット、…
これらのことにより、観始めた時はドキュメンタリーかと思った。
…なんの事前情報も入れずに鑑賞したので…。
しかしすぐにこれは主人公・ブルーノが退行性疾患によって視力が徐々に衰え、ついには失明してしまうということを表現しているのだということに気づく。
いわゆるエンターテイメント性を重んじた作品とは真逆の、今回の映画祭上映作品の中でも一番 作家性の高いものだと感じた。
キャストも演じた俳優さんたちそのままの名前だし、もしかしたら実話を元にしたのだろうか。
一人の少年が病いと向き合いながら、悩み葛藤し、成長していく姿を描く。
そこここに性差別問題、社会のシステムの貧しき者に対する不寛容さ… なども織り込まれているのだが、それとて過度にドラマティックには描いていない。
あくまでそっと、静かに語られていくので、逆に現代の現実問題であることとして、目前に突きつけられる。
ラスト、完全に光をとらえられなくなったブルーノが、ガールフレンドのアンジェラといっしょに目をつぶり、雨に打たれるシーン。
この作品の英題『Bittersweet Rain 』はこのシーンから取られているのだろう。
それは、観ている者にある種の希望を抱かせてくれる光景でもある。