寝木裕和

ピシンギーニャ‐愛情深い男の寝木裕和のレビュー・感想・評価

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ブラジル映画祭 in 東京、にて。

20世紀ブラジル・ポピュラー音楽史の巨人、ピシンギーニャの苦悩と栄光の半生を綴った物語。

名曲、「Carinhoso 」や「Rosa 」は知っていても、ここで史実に基づいて描かれる彼のプライベートについては知らないことばかりだった。

ああ、こういう子沢山の一家の14男(!)として幼少期から演奏を始めたんだな、ああ、彼自身こうやって養子を迎えることになるんだ、ああこんなふうにハダメス・ニャタリらと交流したりしていたんだ、… 浅学な自分にとっては目から鱗落ちまくりだった。

そして作中、現代の名だたるブラジル・シンガーたちによって歌われるピシンギーニャの数々の名曲が挿入されるのも、嬉しかった。

若き日の彼が、パリでジェリー・ロール・モートン作のジャズに感化されて、楽器をサックスに持ち替えた… って話しも、きっと事実に基づいているんだろうなと思い、この頃のジャズが好きな者としては胸が熱くなった。

また、この作品で幼少期のピシンギーニャを演じた子役のフルートを吹いている時の恍惚とした表情が、観ているこちらにも多幸感を与えてくれる。
寝木裕和

寝木裕和