あさひ

美しき仕事 4Kレストア版のあさひのレビュー・感想・評価

美しき仕事 4Kレストア版(1999年製作の映画)
5.0
大傑作だと思う。
Q&Aで言及している人がいたけど、役者とカメラとの距離がどのカットをみても適切すぎて、感嘆する。
外人部隊の兵士たちの訓練をマスターショットを用いず、訓練する兵士たちのウエストショットと、それを見つめるガルーのヨリ、そして少佐のヨリの3つだけで構成することで彼らの心理的距離感やガルーの慟哭がより克明に映し出されており、素晴らしい演出だと思う。
マスターショットを挟んでしまうと現実的距離を観客に可視化してしまい、心理的距離感の近さ(もしくは遠さ)を表現しづらいのにとずっと思っていたので、この映画を見てその考えが間違っていなかったと言える気がする。
監督が言っていた、俳優とカメラの距離を決めるのが1番の仕事っていうの、覚えておこうと思う。

そして、何より訓練やストレッチのシーンの肉体の躍動感がたまらない。美しくて、官能的で、映画館で観れて本当によかった。
ジブチの美しい情景も相まって、彼らの肉体の躍動感がより強調される。そして、それらが強調されることによってガルーの内なる葛藤も、より強調されていた。

35ミリフィルムを用いた理由が、風景と人物を分けて描くのを避けるためというのもとても納得だった。
個人的にはそれはこの映画だけでなく、どんな映画でもその考えが必要だと思う。
キャラクターの生活を描くというのは、彼らが過ごす土地や都市そのものも映し出すということだと思う。

あと、Q&Aで彼らの仕事が『美しき仕事』には見えなかったという意見があったのが印象的。確かに戦争というのが続いている今、彼らの訓練(仕事)が必ずしも正しい行為であるとは言えないと思う。そういう考えには至らなかったので、とても考えさせられた。他にも体を売っていると捉えられるシーンがあったり、夜な夜な遊び回っている兵士たちの行いも美しいとは言えないと思う。
ただ、個人的にはそういった面も含めて、それでも人々の日々の営みを“美しい”と捉えるのがこの映画がここまで傑作である所以だと思う。

監督のトーク付きで鑑賞できたのが何より幸せ。
クレール・ドゥニには一生ついていきます。
あさひ

あさひ