まぬままおま

フォロウィング 25周年/HDレストア版のまぬままおまのレビュー・感想・評価

4.0
これにてノーラン祭り閉幕です。最後が長編デビュー作であり時間の「逆行」が生じていますが、主要作品を全部みることでエッセンスは感じ取れたのではないかと思います。コメントでノーラン作品の全体に対する所感を述べようと思います。

本作もとても面白い。脚本は秀逸だし、時制を崩して物語を展開することはデビュー作からやっているのかと感慨深くなった。

登場人物の思惑が交錯し、ひとつの真実をつくりだす。そしてその真実がただの尾行を趣味としていたビルを本当の犯罪者にしてしまうのだから悲劇だ。

以下、ネタバレを含みます。

本作にはビルとコッブ、金髪の美女の主要人物がいる。

ビルは目についた通行人のあとをつける行為をしている。それは小説の創作のアイデアのためという大義名分はあるが、他人を知るという単なる趣味的なものである。そして偶然、コッブに目をつけ尾行するが、彼にみつかってしまう。しかしコッブはただの通行人ではなかった。彼もまた空き巣に入り、他人を知る行為をしていたのだ。そこからビルは彼の共犯者となり空き巣をしていく。さらにビルはバーで金髪の美女に偶然出会う。彼は彼女の美貌に惹かれていくのだが、彼女は彼の犯した空き巣の被害者であることが発覚する。そして彼は彼女がボスに強請られていることに同情し、事務所の金庫の中にある彼女の写真と金銭を奪うために空き巣を行うことになる。

と、あらすじを記述できるが、実はコッブと金髪の美女は共犯関係にあり、コッブはビルに空き巣の濡れ衣を着させる思惑がある。コッブが他人を知るために空き巣をしていたのか、その真意は分からない。彼女が被害者であることはでっち上げだ。しかし彼女がビルに事務所へ空き巣をさせるのは、彼女自身の思惑であるから、私たちは彼らの共犯関係にまんまと騙される。

彼女は思惑が成就するもボスに雇われているコッブによって殺害されるし、ビルは警察に出頭して、嵌められてしまうのだから悲劇だ。だが彼らの3つの物語が、巧みな語りと時制の崩しによってひとつの真実の物語になってしまうのだから素晴らしい。

ではビルや警察、私たちは何を信じたらいいの?そんな人間不信と身代わりがついて回っていることを、後のノーラン作品の功績から喜んでいいのか、暗澹たる時代だなと嘆いていいのかは分からない。