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ティファニーで朝食を 4Kのmaroのレビュー・感想・評価

ティファニーで朝食を 4K(1961年製作の映画)
4.0
2024年日本公開映画で面白かった順位:18/48
「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:4/4
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★★★★★★★★
映画館で観たい:★★★★★

「午前十時の映画祭14」にて。
1961年のアメリカ映画。
これで3回目の鑑賞だけど、観るたびによさがわかってくる作品。

正直、ストーリー自体は至って普通というか、王道のラブストーリーだと思う。
アパートの上の階に引っ越してきたポール(ジョージ・ペパード)が、下の階に住む奔放な女性ホリー(オードリー・ヘプバーン)と恋仲になるっていうだけで。
ただ、今風に言えば、このホリーは"化粧室に行くだけで50ドルもらえる"パパ活のようなことをしており、ポールはポールで金持ちマダムとママ活している売れない作家だ。
そこ自体にはあまり焦点は当たっていないけれど、身を金に換えている男女という点では、現代風にアレンジが利きそうな設定でもある。

最初にも書いたけど、この映画は観れば観るほどそのよさに惹かれていく。
理由は言語化しづらいんだけど、簡単に言ってしまえば「雰囲気」。
雰囲気なんて空虚この上ないものなんだけど、でも、昔の映画(1960年代~1980年代)ってそういうのがあるんだよね。
あくまでも「今観ると」っていう前提にはなってしまうけど、あのノスタルジー溢れる世界観やゆったりとした時の流れが非常に心地いい。

その雰囲気のよさを構成する要素として特に印象深いのが音楽と衣装。
音楽は、あの有名な『Moon River』。
今でもいろんなところで使われているけれど、聴けば聴くほどに素晴らしい歌だと感じる。
もともと1オクターブと1音しかないオードリー・ヘプバーンの声域のために書かれているということもあってか、シンプルで口ずさみやすいのも魅力のひとつかなと。

衣装は、ヘプバーンが着ている黒いドレスが印象的だけど、デザインしたのはあのユベール・ド・ジバンシィ。
オードリー・ヘプバーンをオードリー・ヘプバーン足らしめるほどに彼女の美しさをより一層引き立てているデザインだ。
『麗しのサブリナ』(1954)から2人の関係は始まったそうだけど、ジバンシィは数々の映画でヘプバーンの衣装を手がけ、彼女が亡くなるまでよき友人だったとのこと。
最近の映画では著名なデザイナーが衣装を手掛けるなんてあんまり聞かないから、いい時代だったんだなって思う。

で、改めて思うけど、やっぱりこの映画はティファニーの最大級の宣伝になってる。
実は、劇中でティファニーで朝食は食べないし、ティファニーの商品も買わないけれど、予算が限られているポールとホリーのために、お菓子の景品の指輪に刻印だけしてくれるあの粋な計らいには胸を打たれる。
さすがに映画の中だからこその演出だろうけど、あれだけでティファニーの株は爆上がりだし、憧れのブランドとしての地位と品位を保てるんじゃないか。
ここまでひとつのブランドにフォーカスした映画もそうそうない気がする。
そういえば、かつて日本でも『せいせいするほど、愛してる』(2016)というティファニーが舞台のドラマがあったけど、あれはまったくティファニー感ゼロで苦笑いするしかなかった(笑)

そんなわけで、今から65年以上も前の映画だけど、とにかく雰囲気が最高なので、人生で一度は観てほしい作品。
音楽もいいし、ドレスも素敵だし、実はティファニーはそこまで関係ないんだけど、ティファニーに対する憧れが生まれる素敵な映画です。
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