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ピクニック at ハンギング・ロック 4Kレストア版の708のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

過去の作品が4Kレストアやリマスター仕様で次々と公開される中、まさかこの作品がそうなるとは思っていなかったので、とても嬉しいです。昔、友達が教えてくれて以来、ずっと気になっていた作品。やっと観ることができました。これって「いまを生きる」のピーター・ウィアーが監督だったんですね。

オリジナルは1975年に公開されて、日本では1986年の公開だったそうですが、ピーター・ウィアーがオリジナルの116分版に納得していなかったため、1998年に自ら再編集した107分のディレクターズ・カット版を制作したそうで、今回はその4Kレストアだそうです。ピーター・ウィアー監督とラッセル・ボイド撮影監督による4Kレストア。

1900年のヴァレンタイン・デイ。寄宿制の女子学校の生徒たちがハンギング・ロックという岩山でピクニックの最中、生徒3人と女教師1人が失踪するという事件。その後、捜査をするものの、生徒のひとりのアーマは見つかるものの、他の人たちは行方不明のまま。物語はそのまま終了します。真相を突き詰める必要のないミステリー。ハンギング・ロックは日本語に直すと「首吊り岩」という意味。それだけでも不気味です。

ミステリアスさってどこか謎めいた神秘的な部分があるし、美しさと恐ろしさは紙一重だと思うんです。ミステリーなのに謎解きがされないまま、未完のまま終わる不明確さは、触れてはいけない領域での出来事のようにも思えて、不気味だけど美しくて神々しく思えてしまいます。そして絵画的に映し出されるピクニックの光景は、美しいけどどこか不自然。だけどそこにくすぐられるんです。

ハンギング・ロックの磁力に狂わされるかのように時計が12時で止まり、生徒たちは厳しくて窮屈な校則、コルセット、ストッキング、手袋をすべて脱ぎ捨てて開放感を堪能するかのような若い乙女たち。途中で逃げ出した生徒のイディスの証言によれば、マクロウ先生はズロース1枚だったとのこと。堅物な教師をも狂わせるかのようなパワフルさが、ハンギング・ロックにはあることが伝わります。

いろんな人がこの作品にインスパイアされてますが、ソフィア・コッポラもそのひとり。ソフィアにとっては一過性のインスパイアというより熱源のような作品。「ヴァージン・スーサイド」もそうだけど、「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」はそのまま踏襲という感じ。

特に言及されていないけど、アップルヤード校長と行方不明になったマクロウ先生って、実はデキていたんじゃないかと思いました。ラスト近くで校長が、マクロウ先生は男っぽくて頼り甲斐があると称賛していたことや、マクロウ先生が消えてから苛立ちや疲労感が漂い、ラストでハンギング・ロックを登りに行って亡くなったのも、マクロウが亡くなったであろう場所で自分も亡くなろうとしたのでは…とふと思ったりしました。

そういえば、この話は実話だと言われていますが、実はフィクションという線も濃厚みたいです。でも、ノンフィクションなのかフィクションなのかを解き明かさず、曖昧にしておいたほうが、この作品がよりミステリアスで魅力的に見えるように思えます。
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