消々

ピクニック at ハンギング・ロック 4Kレストア版の消々のレビュー・感想・評価

4.0
「白昼夢でした」と言われても肯ける。
幻想的を超えて、現実と虚構がない混ぜになったような話だった。
18世紀らしいシノワズリ趣味の洋館。少女たちが目覚めるところから始まり、彼女らは摘みたてのバラを浸した水で顔を洗い、くすぐったげに笑いながら愛の手紙らしき文を読み合う。白いワンピースを身にまとった彼女らは一同に会し、「セイント・バレンタインズデイ!」と高らかにキューピッドの像を掲げ、バラの花びらが散る朝食の卓につく。
ピクニックに出かけた先の岩場でも、刺繍するもの、本を読むもの、寝そべって花を見つめるもの、友人の髪を弄びながら暇に興じるもの、それぞれに怠惰な午後を過ごす。グレーの岩場に散る真っ白な少女たちは、さながら天使。
これが夢でないなら何だ、と言いたいくらい。
その後物語は急転直下、失踪とその混乱に突き落とされるけれど、白昼夢は一向に覚めない。むしろ、そのミステリアスさが神秘的にさえ思える始末。
もはやストーリーラインがどうの、というより、眼の前を過ぎ去る幻覚をぼんやり眺めていた、というほうがしっくり来る。その意味で衝撃作だった。
消々

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