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幕末太陽傳のdiesixxのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
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毎年お正月になると『幕末太陽傳』見るのがルーチン化している。見ている間、「これが世界でいちばん面白い映画だ」と思わせるエネルギーに満ちている。「居残り佐平次」を主軸に古典落語のモチーフが織り込まれ、役者の台詞回しや振る舞いも落語を意識した小気味の良さが目立つ。
左幸子と南田洋子のチャキチャキした女性像も魅力的だし、芦川いずみのかれんな存在感も素晴らしい。石原裕次郎は、幕末の太陽族を演じるセルフパロディにより適度な客体化に成功。
そして何はなんともフランキー堺である。口八丁手八丁であれよあれよとのし上がり、男も女も惚れさせ、頼られる。石原裕次郎に刀を向けられても、とんちとユーモア、度胸とハッタリで渡り合い、庶民の反骨と気概を語りもする。真の意味での「かっこいいとは、こういうことさ」って感じ。そのバイタリティゆえに、時折死の匂いが通り過ぎたときの真顔にどきっとする。
当初考案されていた通り主人公が現代の品川を走り抜けるラストだった。実現しなかったが、夭折の天才が残した本作は文字通り死と時を超えた不朽の名作となり、作品そのものがラストシーンの哲学とメッセージを体現してしまった。
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