BUSSAN

幕末太陽傳のBUSSANのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.5
2009年 キネマ旬報オールタイム・ベスト
映画遺産200 日本映画篇 第4位

時は幕末、品川宿の遊郭「相模屋」を舞台に、次々と起こる出来事をコミカルに描いた笑いあり、涙あり、人情ありのエンターテイメント超大作です。

僕は全然見たことがないんですが、フランキー堺が演じる主人公は『居残り左平次』から、ストーリーは『品川心中』『三枚起請』『お見立て』という有名な古典落語から取り入れているらしいです。しかしまぁ、古さを感じさせないポップで、テンポのいい映画で、白黒映画が苦手な方もとっつき易いのではないかと思います。

ちょっとレビューから話が逸れますが、本作が舞台となった「品川宿」ですが、個人的にちょっと思い入れがある場所なんです。

7年前、大学の卒業旅行として「東海道五拾三次」を歩こうという企画を友人たちに提案して、実際に2013年の元旦から、京都の三条大橋を始点に、東京の日本橋まで、16日間ぶっ通しで487.8キロ(万歩計で測ると600キロでした)を歩きました。

「東海道五拾三次」とは、東海道にある53の宿場町を指しているんですが、当時の面影を残すところもあれば、跡形も無いところも当然ありました。

さて、本作が舞台となる「品川宿」ですが、五拾三次のうち、「第一の宿場町」とされてまして、京都から歩き始めた僕たちにとっては「最後の宿場町」だったんです。

そんな「品川宿」は、五拾三次の中でも、ほとんど面影がないほうで、ポツポツと石碑が建っている程度だったんですが、どこか雰囲気のある町だったんです。単に自分たちにとって、ゴール直前の最後の宿場町というだけでない、何か見えない面影を感じる町だったのが印象深く覚えています。

後から調べて分かったのですが、本作が舞台となった遊郭「相模屋」は現在は1階にコンビニがあるマンションになっているようです。寂しいなぁ。

さてさてレビューから大きく脱線しましたが、本作はそんな寂しさも吹き飛ばすぐらいにパワフルで、エネルギー溢れる作品でしたので、是非是非多くの人に見てもらいたいと願う次第であります。

面影が少なくなった品川宿ですが、目を閉じれば、旧東海道を颯爽と駆け抜ける居残り左平次の笑顔が想起させる、そんな映画です。
BUSSAN

BUSSAN