ENDO

夕陽に向って走れのENDOのレビュー・感想・評価

夕陽に向って走れ(1969年製作の映画)
4.3
J.ボールドウィンの言葉を思い出す。"アメリカ人は精神が底抜けに貧しく人間らしい在り方を恐れている。人前での自分と私的自分を分けた時確固たるつながりがない"のだと。公私のモラルが反転するレッドフォードのキャラクターは唯一無二だがこの揺らぎは現実を生きる人間としてはごく当たり前に受け入れられる。愛情を搾取し権力を利用するエゴの塊ながら人種差別への怒りと先住民への敬意を併せ持つからだ。その死に至る流れすら省略されて蹂躙される前にあっけなく退場してしまうカップルには淡い悲哀を感じるのみで、その死は忘れ去られ日常に溶けていくだろう。それでも生者は生活を紡いでいく。entertainmentさせるつもりもない映画を観て日常に帰りたくなるのも一興。瞬間の不在は自ら立ち上がるための余白となる。
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