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夕陽に向って走れのSPNminacoのレビュー・感想・評価

夕陽に向って走れ(1969年製作の映画)
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邦題が便乗した白人強盗コンビのブロマンス映画とは違って、インディアン居留区で先住民男女の逃避行には夢も自由もない。ただ衝動的に逃げるだけ。白人は彼らを過剰に恐れて服従させようとするが、自分たちが野蛮な略奪者であることにも圧倒的権力にも無自覚だ。でもその支配に抵抗しながら、ウィリーも恋人ローラを力づくで巻き込んで服従させているところがまたグロテスク。
レッドフォードは追跡する保安官。彼は医師で居留区監督官エリザベスを屈服させようとするが、同時にやましさを自覚する。彼女の帽子越しにレッドフォードの顔の一部が隠れたショットは、後ろめたさの暗示だろう。彼も自分にある白人男性の暴力的規範から逃げたがっている。やはりレッドフォードは本質的に追う側じゃない、逃げる側だ。
ウィリーとローラ、保安官レッドフォードとエリザベスは対になっているものの、決して相似形ではない。1対1で対峙した時の、上と下の構図。でもどちらも逃げきれはしない。手厚く葬って、汚れた手を砂で洗っても罪は消えない。白人側視点ではあるし、そもそもロバート・ブレイクやキャサリン・ロスが先住民役ってのがどうかという話だけど、時代を感じる苦い余韻。
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